合同会社の定款|業務執行社員だけで業務決定する条項モデル

合同会社の経営、意思決定で悩んでいませんか?

「社員が増えてきたら、以前のように物事がサクサク決まらなくなった」
「出資はしてもらいたいが、経営の細かい部分にまで口出しされるのは避けたい」
「一部のメンバーに経営を集中させ、もっとスピーディーに事業を展開したい」

合同会社を経営する中で、このような悩みを抱えていらっしゃる方は少なくありません。会社の成長に伴い社員が増えることは喜ばしい一方で、意思決定のプロセスが複雑化し、経営のスピードが鈍化してしまうのは避けたいところです。

合同会社は、株式会社に比べて組織設計の自由度が高いことが大きな魅力です。その魅力を最大限に活かす鍵となるのが「定款」の定め方。特に、経営の舵取りを特定のメンバーに集約したい場合、定款の設計が極めて重要になります。

この記事を最後までお読みいただければ、業務執行社員に権限を集中させ、迅速な意思決定を実現するための具体的な定款の作り方が分かります。私たち、えなみ司法書士事務所は、合同会社の柔軟な制度設計をサポートする専門家として、あなたの会社の成長ステージに合わせた最適な定款作りをお手伝いします。どうぞご安心ください。

合同会社の意思決定、原則と例外を知る

まず、なぜ定款の定めが重要なのかを理解するために、合同会社の意思決定に関する基本的なルールから見ていきましょう。会社の法律上のルール(会社法)が定める「原則」と、定款によって設定できる「例外」を知ることが、最適な組織設計への第一歩です。

原則:業務決定は「全社員の過半数」

会社法では、合同会社の業務執行、つまり経営上の意思決定は、原則として「社員の過半数」の一致によって行うと定められています(会社法第590条第2項)。

ここで重要なのは、株式会社のように出資額の多寡で議決権が変わるのではなく、出資額に関わらず「社員の頭数」の過半数で決まるという点です。例えば、社員が3人いれば、そのうち2人の賛成が必要になります。

この「所有と経営の一致」を前提としたルールは、社員全員が経営者であるという合同会社の基本的な考え方に基づいています。創業期の少人数で運営している間は、この原則でもスムーズに機能するでしょう。しかし、社員が増え、中には出資のみで経営には関与しないメンバーが出てくると、意思決定のたびに全員の過半数の同意を取り付けることが、経営のスピードを阻害する「足かせ」になり得るのです。

参照:法務省「合同会社の設立手続について」

例外:定款自治で「業務執行社員」に権限を集中できる

そこで登場するのが、「例外」のルールです。会社法では、合同会社(持分会社)の業務決定は原則として「社員の過半数」で行い、定款に別段の定めがある場合にはその原則を修正できるとされています(会社法第590条第2項、第591条第1項)。これこそが、今回のテーマの核となる法的根拠であり、合同会社の柔軟性を象徴する「定款自治」の考え方です。

具体的には、定款で特定の社員を「業務執行社員」として定めることで、経営に関する意思決定の権限をそのメンバーに集約させることが可能になります。これにより、経営に関与しない社員(非業務執行社員)の同意を得ることなく、業務執行社員だけでスピーディーな意思決定ができるようになるのです。

このように、合同会社は定款という会社の憲法を自ら作ることで、株式会社とは異なる、より自由度の高い組織設計を実現できます。海外からの投資を受けて不動産会社を設立する際など、出資者と経営者を明確に分けたいケースでもこの仕組みは有効に機能します。

参照:e-Gov 法令検索「会社法」

合同会社の意思決定ルールを図解。原則である「全社員の過半数」での決定と、定款で定める例外「業務執行社員の過半数」での決定の違いを視覚的に比較している。

【モデル条文】業務執行社員だけで業務決定するための定款条項例

それでは、実際にどのように定款に定めればよいのか、具体的なモデル条文を見ていきましょう。ここでは、多くの会社で採用しやすい「基本モデル」と、より権限を集中させる「応用モデル」の2つのパターンをご紹介します。各条項の意図や効果を司法書士の視点から解説しますので、ご自身の会社の状況と照らし合わせながらご確認ください。

基本モデル:一般的な業務決定を業務執行社員に委任する

まずは、経営陣と出資者が分かれているような、多くの合同会社で採用可能なバランスの取れた条項例です。日常的な業務執行の決定権を業務執行社員に限定します。

(業務執行社員)

第〇条 当会社の業務は、業務執行社員が執行する。

2 業務執行社員は、次の者とする。  〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号   〇〇 〇〇

第〇条 業務執行社員が複数いる場合、代表社員1名を置き、業務執行社員の互選によりこれを定める。

2 代表社員は、当会社を代表し、当会社の業務を統括する。(業務の決定)

第〇条 当会社の業務執行は、法令又はこの定款に別段の定めがある場合を除き、業務執行社員の過半数をもって決定する。

【この条文のポイント】

  • 業務執行社員の特定:まず「誰が」業務を執行するのかを明確に定めます。ここに名前が記載されていない社員は、経営の意思決定には参加しない「非業務執行社員」となります。
  • 代表社員の選定:業務執行社員が複数いる場合に、会社の代表者を定める規定です。代表社員が会社の顔として、契約などの対外的な行為を行います。
  • 意思決定の方法:最も重要なのがこの条項です。「業務執行社員の過半数」と定めることで、会社法の原則(全社員の過半数)を上書きし、経営の意思決定を業務執行社員に集約させています。

応用モデル:重要事項も業務執行社員だけで決定する

次に、より強力に業務執行社員へ権限を集中させ、さらに迅速な意思決定を目指すための応用モデルです。会社法上、業務執行社員を定款で定めた場合でも、支配人の選任・解任など、社員の過半数による決定が原則とされる事項があります。そこで、そうした事項も含めて、定款で業務執行社員の決定に委ねることを想定した規定を追加します。

(業務の決定)第〇条 当会社の業務執行は、法令又はこの定款に別段の定めがある場合を除き、業務執行社員の過半数をもって決定する。2 次に掲げる事項についても、前項と同様とする。 (1) 支配人の選任及び解任 (2) 支店の設置、移転及び廃止

【この条文のポイント】

  • 権限委任範囲の拡大:「支配人の選任・解任」や「支店の設置」といった重要性の高い業務決定も、業務執行社員の過半数で行えるように明記しています。
  • メリットとリスク:この設定により、事業拡大など重要な局面でも機動的な経営判断が可能になります。一方で、非業務執行社員の権限がより一層縮小されるため、導入にあたっては全社員の十分な理解と合意形成が不可欠です。権限の集中は、時として社員間の溝を深めるリスクも伴うことを忘れてはなりません。

注意:全社員の同意が必須な事項とは?

定款自治は万能ではありません。たとえ定款で業務執行社員に広範な権限を与えたとしても、法律によって「総社員の同意」がなければ実行できない事項が存在します。これらは定款自治の限界点であり、経営者として必ず押さえておくべき知識です。

【総社員の同意が必要な主な事項】

  • 定款の変更(会社法第637条)
  • 株式会社への組織変更など、持分会社の種類の変更(会社法第638条)
  • 社員の持分の差押え債権者による社員の退社請求(会社法第609条)

特に重要なのが「定款の変更」です。会社の根幹ルールである定款を変更するには、原則として全社員の同意が必要です。業務執行社員だけで会社のルールを自由に変更できてしまっては、非業務執行社員の立場が著しく不安定になるためです。会社の設立時に定めた定款は、それだけ重い意味を持つということを理解しておきましょう。

非業務執行社員の権利とトラブル回避策

司法書士が合同会社の定款について相談に乗っている様子。経営者が専門家のアドバイスに安心している。

業務執行社員に権限を集中させると、経営に関与しない「非業務執行社員」との間で、認識の齟齬やコミュニケーション不足からトラブルが発生する可能性があります。円満な会社運営を続けるためには、彼らの権利を尊重し、不安を取り除く工夫が不可欠です。ここでは、司法書士の視点から具体的なトラブル回避策をアドバイスします。

経営に参加できなくても「監視権」は保障される

まず知っておくべきは、たとえ業務執行権を持たない非業務執行社員であっても、会社法によって重要な権利が保障されているという点です。それが「業務及び財産の状況を調査する権利(監視権)」です(会社法第592条)。

この権利は、会社の経営が適正に行われているかをチェックするためのもので、定款で完全に排除することはできません。具体的には、事業年度の終了時に計算書類の閲覧を請求したり、会社の業務や財産の状況について質問したりすることが可能です。

業務執行社員は、この権利が行使された場合、誠実に対応する義務があります。「経営には口出しするな」という姿勢は、不信感を招き、深刻な対立に発展しかねません。

情報共有のルールを定款で定めておく

トラブルの多くは、情報格差とコミュニケーション不足から生まれます。これを防ぐ最も効果的な方法は、情報共有のルールをあらかじめ定款に盛り込んでおくことです。

例えば、以下のような条項を追加することが考えられます。

(事業報告)第〇条 業務執行社員は、毎事業年度終了後3箇月以内に、当該事業年度の計算書類及び事業の概況を記載した書面を作成し、全社員にこれを報告しなければならない。

このように定期的な報告を義務付けることで、非業務執行社員は会社の状況を把握でき、安心感を得られます。これは、無用な監視権の行使を防ぎ、信頼関係を維持するための有効な予防策となります。

持分の譲渡や相続に関する取り決めも重要

意思決定権限以外でトラブルになりやすいのが、「持分の譲渡」と「相続」の問題です。非業務執行社員が、知らないうちに自分の持分を第三者に譲渡してしまうと、会社の人間関係が複雑になり、経営に支障をきたす恐れがあります。

これを防ぐためには、定款で持分の譲渡に制限をかけることが極めて重要です。

(持分の譲渡)第〇条 社員は、その持分の全部又は一部を他人に譲渡する場合には、他の社員全員の承諾を得なければならない。

また、社員が亡くなった場合の相続も同様です。定款に定めがなければ、相続人が自動的に社員となり、会社の経営に関与してくる可能性があります。これを避けたい場合は、相続人が持分を承継するものの社員にはならず、持分払戻請求権のみを取得する旨を定めておくことも可能です。一人会社の代表者が死亡した場合はもちろん、複数社員の会社でも、相続に関する規定は将来の紛争を防ぐために不可欠です。

定款作成・変更で迷ったら専門家にご相談を

ここまで、業務執行社員に権限を集中させるための定款条項モデルと、それに伴う注意点について解説してきました。しかし、これらはあくまで一般的なモデルに過ぎません。最適な定款は、社員構成、事業内容、将来のビジョンなど、会社の数だけ存在します。

インターネット上のテンプレートを安易に流用した結果、いざという時に会社の実情に合わず、かえってトラブルの原因となってしまうケースも少なくありません。

定款は、一度作成したら終わりではありません。会社の成長に合わせて、見直しや変更が必要になることもあります。そうした商業登記全般を含め、定款の作成や変更で少しでも迷いや不安を感じたら、ぜひ私たち司法書士のような専門家にご相談ください。専門家に相談するメリットは、単に法的に有効な書類を作成できることだけではありません。

  • 将来起こりうるリスクを予測し、それを未然に防ぐ条項を提案できること
  • 社員間の力関係や想いを汲み取り、全員が納得できるルール作りをサポートできること
  • 法的な観点から、お客様の会社の成長を長期的にサポートできること

えなみ司法書士事務所では、お客様の状況を丁寧にヒアリングし、最適な組織設計をご提案いたします。初回のご相談は無料ですので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

合同会社の定款に関するお問い合わせ

まとめ

今回は、合同会社において業務執行社員だけで業務決定を行うための定款設計について詳しく解説しました。最後に、本記事の重要なポイントを振り返りましょう。

  • 柔軟な設計が可能:合同会社の意思決定ルールは、会社法の原則とは別に、定款で柔軟に設計することができます。
  • 権限集中でスピード経営:経営の意思決定を「業務執行社員」に集中させることで、迅速で機動的な経営が実現できます。
  • トラブル予防もセットで:権限を集中させる際は、経営に関与しない「非業務執行社員」の権利(特に監視権)にも配慮し、情報共有のルールなどを定款に盛り込むことがトラブル予防の鍵です。
  • 最適な定款はオーダーメイド:会社の状況によって最適な定款は異なります。将来のリスクを回避し、円満な会社運営を目指すなら、専門家である司法書士への相談が賢明な選択です。

定款は、あなたの会社の未来を左右する設計図です。この記事が、貴社の成長と安定経営の一助となれば幸いです。

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