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成年後見制度2026年改正のポイント速報!司法書士が解説

2026-02-17

2026年成年後見制度改正で何が変わる?2つの重要ポイント

「親の判断能力が心配だけど、成年後見制度は一度使うとやめられないって聞くし…」
「財産を全部管理されるのは、なんだか大げさすぎる気がする…」

これまで成年後見制度の利用をためらう大きな理由となっていた、これらの不安。もしあなたも同じように感じているなら、ぜひ知っていただきたいのが、成年後見制度の見直しに向けて進められている議論(2026年度中の法改正を目指す動き)です。この改正は、制度が抱えていた大きな課題を解消し、もっと私たちに寄り添った、使いやすいものへと生まれ変わらせるための大きな一歩となります。

難しく考える必要はありません。ポイントはたったの2つです。これまでと何がどう変わるのか、あなたの生活にどんな良い影響があるのか、一緒に見ていきましょう。このテーマの全体像については、成年後見人を選ぶべき?専門家が判断基準と代替策を解説で体系的に解説しています。

ポイント1:「終わりのない後見」から「目的達成で終われる後見」へ

これまでの成年後見制度の大きな壁の一つは、「取り消しの審判を受けない限り、原則としてご本人が亡くなるまで続く」という、いわゆる終身型になりやすい点でした。例えば、認知症の親御さんの実家を売却するために制度を利用した場合、売却後も後見人の役割は続き、報酬も発生し続ける…。この重い負担が、利用をためらわせる大きな原因でした。

しかし、見直し議論では、この終身型になりやすい点を改める方向で検討が進められています。これにより、「特定の目的が達成されたら、後見を終了させる」といった、より柔軟な利用を可能にする案が示されています。

たとえば、「施設入所費用を捻出するために実家を売却する」という目的のためだけに後見制度を利用し、売却手続きが無事に終わった段階で後見人の役割も終了する、といった使い方ができるようになります。これは、制度利用の心理的、そして経済的なハードルを大きく下げる、画期的な変更点と言えるでしょう。

ポイント2:「すべてお任せ」から「必要なことだけ頼める」へ

もう一つの大きな変更点は、支援のあり方そのものが変わることです。現行制度では、ご本人の判断能力に応じて「後見」「保佐」「補助」という3つのタイプに分けられ、それぞれに支援の範囲が決められていました。しかし、この仕組みでは本人の意思とは関係なく、過剰な支援になってしまうケースも少なくありませんでした。

成年後見制度の2026年改正による変化を示した図解。「すべてお任せ」型だった現行制度が、改正後は「オーダーメイド」型へと変わり、より柔軟に利用できるようになることを比較している。

今回の見直し議論では、この3類型を一本化する案(「補助」をベースにする案)が検討されています。これは単なる制度の簡素化ではありません。「ご本人の意思を最大限尊重し、本当に必要な支援だけをオーダーメイドで設計する」という考え方への大きな転換を意味します。

これからは、「財産のすべてを管理してもらう必要はないけれど、この不動産の契約手続きだけは不安だから手伝ってほしい」といった、ピンポイントの依頼が可能になります。ご本人の自己決定権がより尊重されることで、安心して制度を利用できる環境が整うのです。

【ケース別】改正で私たちの生活はどう変わる?

では、この2つの大きな変更点が、私たちの具体的な悩みにどう影響するのでしょうか。「不動産を売りたい」「これから申立てを考えている」という、ご相談の多い2つのケースをもとに、改正前と後で何が変わるのかを見ていきましょう。

ケース1:認知症の親の不動産を売却したい場合

「父が介護施設に入ることになり、その費用を作るために実家を売りたい。でも、父は認知症で不動産の売買契約ができない…」

これは、非常に多くの方が直面する切実な悩みです。

【これまでの制度では…】
成年後見制度を利用して不動産を売却することは可能でした。しかし、先述の通り「終身制」が壁となります。不動産の売却という目的を果たした後も後見は続き、ご本人が亡くなるまで専門家への報酬が発生し続けました。これが負担となり、制度の利用に踏み切れない方もいらっしゃいました。

【改正後の制度では…】
「不動産の売却」という目的を定めて後見を開始し、売却手続きが完了した時点で後見を終了できるようにする案が示されています。これにより、必要な期間だけ専門家のサポートを受け、費用負担を最小限に抑えながら目的を達成できるようになるのです。これまで費用面でためらっていた方にとって、不動産の売却という大きな課題を乗り越えるための、心強い選択肢となるでしょう。

ケース2:これから成年後見の申立てを考えている場合

「母の預金の管理や、介護サービスの契約手続きが難しくなってきた。そろそろ成年後見の申立てを考えたほうがいいかもしれない…」

【これまでの制度では…】
申立てをすると、家庭裁判所が医師の診断書などをもとに「後見」「保佐」「補助」のいずれかに分類しました。これにより、本人が「ここだけ手伝ってほしい」と思っていても、必要以上に権限が制限されてしまう可能性がありました。

【改正後の制度では…】
(仮に)類型の一本化が実現すれば、ご本人の状態や希望に応じて、より柔軟に支援内容を設計できるようになると期待されています。「預金の引き出しは家族ができるから、高額な契約を結ぶときだけ専門家の同意が必要」といった、一人ひとりの状況に合わせた「オーダーメイド型の支援」が基本となります。これにより、ご本人の意思がより尊重され、過剰な介入を防ぐことができるため、安心して申立てを検討できるようになるはずです。

専門家が回答「改正を待つべき?今すぐ動くべき?」

「改正で制度が使いやすくなるのは分かった。でも、うちは今すぐ動くべき?それとも2026年の改正を待ったほうがいいの?」

これは、皆さんが最も悩むポイントだと思います。司法書士として、この問いにお答えするための判断軸を2つお伝えします。それは「緊急性」と「目的」です。

「今すぐ動くべき」ケースとは?

法改正を待つこと自体が大きなリスクになる、待ったなしの状況があります。もし、以下のケースに当てはまる場合は、現行制度であっても速やかに申立てを行い、ご本人を保護することを最優先に考えるべきです。

  • 親の預金口座が凍結され、生活費や医療費の支払いに困っている
  • 悪質な訪問販売のターゲットにされるなど、消費者被害に遭う危険が迫っている
  • 親族間で財産をめぐるトラブルが起きており、本人の財産が脅かされている

このような緊急性の高い状況では、改正を待つ数年間に取り返しのつかない事態が起こる可能性があります。まずはご本人の安全と生活を守ることが何よりも重要です。

リビングで娘が年配の母親の手を握り、真剣に話を聞いている。将来の不安について親子で話し合うことの重要性を示唆している。

「改正を待つのも選択肢」になるケースとは?

一方で、そこまで緊急性が高くない場合は、改正を待つことも有力な選択肢となります。

  • 今は家族のサポートで問題なく生活できているが、将来に備えておきたい
  • 不動産売却を考えているが、特に時期を急いでいるわけではない

これらのケースでは、改正後の「目的達成で終了できる」「必要なことだけ頼める」という柔軟な制度を利用するメリットが大きいと考えられます。ただし、「待つ」と決めた場合でも、何もしないのは得策ではありません。ご本人の判断能力がはっきりしているうちに、任意後見や家族信託といった他の選択肢を検討するなど、「今できる準備」を進めておくことが非常に大切です。

法改正を見据え、今から準備できること

改正を待つにせよ、今動くにせよ、最も大切なのは「ご本人の意思」です。判断能力がはっきりしているうちに行動を起こすことで、選択肢は大きく広がります。

任意後見契約や家族信託も選択肢に

成年後見制度(法定後見)は、すでにご本人の判断能力が低下してしまった後の、いわば最終手段です。そうなる前に、ご本人の意思で将来の財産管理や身上監護について決めておく方法があります。

  • 任意後見契約:「もし将来、判断能力が衰えたら、この人(任意後見人)に、このような支援をお願いします」と、あらかじめ公正証書で契約しておく制度です。財産管理だけでなく、介護サービスの契約といった身上監護も任せることができます。
  • 家族信託:特定の財産(例えば、実家の不動産や預金)の管理・処分を、信頼できる家族に託す契約です。不動産の売却や賃貸経営など、柔軟な財産管理が可能で、特に財産管理が主な目的の場合に有効な手段となります。

どちらの制度が適しているかは、ご家族の状況やご本人の希望によって異なります。成年後見以外の選択肢も視野に入れ、最適な方法を検討することが大切です。

家族会議で意思を確認しておく

どんな制度を選ぶか以前に、最も重要で、そして最初に行うべき準備は「家族での話し合い」です。

ご本人が元気なうちに、親子で、ご兄弟で、将来について話し合う時間を作りましょう。

  • 将来、どんな場所で、どのように暮らしたいか
  • 財産の管理は誰に任せたいか
  • 延命治療についてどう考えているか

こうしたデリケートな話題は、つい後回しにしがちです。しかし、ご本人の意思が分からなくなってからでは、家族がすべてを決めなければならず、大きな負担と後悔に繋がることも少なくありません。エンディングノートなどを活用して、ご本人の想いを書き留めてもらうのも良い方法です。また、遺言書の作成も、相続時のトラブルを防ぎ、ご本人の意思を実現するための有効な手段となります。法的な手続きだけでなく、家族の絆を深めるためにも、ぜひ対話の機会を持ってください。

まとめ:成年後見制度の改正は、あなたと家族の未来を守るための大きな一歩です

2026年に予定されている成年後見制度の改正は、これまで多くの方が感じていた「使いにくさ」を解消し、より一人ひとりの意思と現実に寄り添う制度へと生まれ変わる、非常にポジティブな変化です。

「終わりのない後見」から「目的達成で終われる後見」へ。
「すべてお任せ」から「必要なことだけ頼める後見」へ。

この変化は、あなたとあなたの大切なご家族の未来を守るための、大きな希望となるはずです。

親御さんの将来について悩むことは、決して特別なことではありません。多くの方が同じ不安を抱えています。大切なのは、一人で抱え込まず、正しい情報を得て、早めに準備を始めることです。

今回の法改正について、あるいはご自身の状況でどの選択肢が最適なのか、少しでもご不安な点があれば、どうぞお気軽にご相談ください。あなたとご家族に寄り添い、最善の道筋を一緒に考えさせていただきます。

成年後見制度に関するお問い合わせ

参照:法制審議会-民法(成年後見等関係)部会

契約満了後の借地トラブル解決法|借地人の退去方法

2026-01-15

契約満了後も住み続ける借地…地主様のその善意が招く法的リスク

「契約期間はとっくに満了しているのに、長年の付き合いだからと強く言えず、そのまま住んでもらっている…」
「土地を貸していた親戚が亡くなった。建物が残ったままだが、相続人が誰なのか分からない…」

このような状況に、頭を悩ませていらっしゃる地主様は少なくありません。特に、当事務所にご相談いただくケースで多いのが、親戚に土地を貸していた、というものです。契約が満了しても、親戚関係ということもあり、建物を片付けて出ていってほしいとは言い出しにくい。そうこうしているうちに、その親戚の方が亡くなってしまい、問題がより複雑になってしまった、というご相談でした。

お世話になった方への温情や善意から占有を黙認しているそのお気持ち、痛いほどよく分かります。しかし、その「善意」が、法的には「黙示の更新」とみなされ、意図せず借地契約が継続している状態になってしまったり、相続が絡むことで解決がさらに困難になったりするリスクをはらんでいるのです。

このまま放置してしまうと、ご自身の土地であるにもかかわらず、思うように活用できなくなるばかりか、次世代にまで問題を先送りしてしまうことになりかねません。この記事では、司法書士として、このような複雑に絡み合った借地問題を法的に整理し、円満な解決へと至るための道筋を分かりやすく解説していきます。一人で抱え込まず、まずは現状を正しく把握することから始めましょう。

相続が関係する複雑な手続きの全体像については、遺産整理業務(相続手続きのサポート)で体系的に解説しています。

まず確認すべきこと:「黙示の更新」は成立していますか?

契約満了後の借地トラブルを解決する上で、最初に確認すべき最も重要なポイントは、「黙示の更新」が成立しているかどうかです。これは、地主様と借地人(またはその相続人)との間に、今も法的な契約関係が続いているのか、それとも完全に終了しているのかを判断する上で、決定的な違いを生むからです。

借地借家法では、借地権の存続期間が満了する場合に、借地権者が契約の更新を請求したときや、満了後も土地の使用を継続するときは、土地上に建物がある場合に限り、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされます(いわゆる法定更新)。ただし、借地権設定者(地主)が遅滞なく異議を述べたときは、この限りではありません。言葉は難しく聞こえますが、要は「暗黙の了解で契約が続いている」と法的に判断される状態を指します。

「黙示の更新」が成立するケースとしないケースを比較する図解。地代の受領や異議の有無が判断のポイントであることを示している。

地代を受け取り続けている場合のリスク

「黙示の更新」が成立してしまう最も典型的なケースが、契約期間が満了した後も、地主様が地代を受け取り続けている場合です。地主様としては「住み続けているのだから、せめて地代くらいは」というお気持ちかもしれません。しかし、法的には、地代を受け取るという行為は「契約の継続を承認した」と解釈される可能性が非常に高いのです。

特に、何の異議も唱えずに地代を受け取ってしまうと、後になって「契約は満了していたはずだ」と主張しても、その言い分が認められにくくなります。この状態は、地主様にとって、将来的に土地の明け渡しを求める際に「正当事由」が必要になったり、高額な立ち退き料の支払いが必要になったりする、極めて不利な状況と言えるでしょう。

地代は受け取っていないが、退去を求めていない場合

では、地代は受け取っていないものの、特に退去を求めず、占有を黙認している場合はどうでしょうか。この場合、直ちに「黙示の更新」が成立するとまでは言えないかもしれません。しかし、この状態を長期間放置することは、決して得策ではありません。

なぜなら、長期間にわたって平穏に占有が続いたという事実が、相手方の権利を保護する方向で考慮されたり、いざ明け渡しを求める際に、解決金(事実上の立ち退き料)を支払わなければ交渉がまとまらなくなったりする可能性があるからです。問題を先送りにすることは、静かにリスクを育てているのと同じことなのです。

参照:借地借家法(平成三年法律第九十号)

【状況別】契約満了後の借地人を退去させるための正しい手順

ご自身の状況が「黙示の更新」に当たる可能性があるか、それとも契約は完全に終了していると言えるか、おおよその見当がついたでしょうか。ここからは、具体的な状況に合わせて、問題を解決するための正しい手順を解説していきます。

ケース1:相続人が判明している場合の手順

亡くなった借地人の相続人が誰か分かっている場合は、まずその相続人との話し合いから始めることになります。感情的にならず、法的な権利と義務に基づいて冷静に交渉を進めることが重要です。

  1. 意思の明確な伝達
    まずは内容証明郵便などを利用して、(更新が成立していない場合には)借地契約が期間満了により終了していること、または(更新が成立している場合には)契約関係を整理したいこと、そして地主としては土地上に残っている建物を収去して土地を明け渡してほしい、という意思を明確に伝えます。これにより、後のトラブルを防ぐための証拠にもなります。
  2. 建物収去義務と建物買取請求権の確認
    交渉の最大のポイントは、残された建物をどうするかです。原則として、契約が終了した場合、借地人(その地位を継いだ相続人)は建物を収去して土地を更地に戻す義務(建物収去土地明渡義務)を負います。しかし、契約の状況によっては、借地人側から「この建物を時価で買い取ってください」と請求できる権利(建物買取請求権)が認められる場合もあります。どちらの権利が優先されるかは専門的な判断が必要ですが、これらの法的知識を前提に交渉を進めることが不可欠です。
  3. 交渉から法的手続きへ
    話し合いで円満に解決できれば一番ですが、どうしても合意に至らない場合は、裁判所に「建物収去土地明渡請求訴訟」を提起することになります。なお、相続人が複数いるにもかかわらず、中には連絡が取れない相続人がいて交渉が進まないケースもあります。

ケース2:相続人不明・相続放棄された場合の手順

借地人が亡くなり、戸籍を調べても相続人が見つからない、あるいは全ての相続人が相続放棄をしてしまった、というケースは最も対応が困難です。なぜなら、交渉する相手が誰もいないからです。この場合、個人間の話し合いでの解決は不可能であり、家庭裁判所を通じた法的な手続きが必須となります。

相続人不明の借地トラブル解決フローチャート。家庭裁判所への相続財産管理人選任申立てから、管理人との交渉までの流れを示している。

その手続きとは、「相続財産清算人(※2023年4月1日施行の改正民法により、従来『相続財産管理人』と呼ばれていた清算手続の担い手の名称が変更されました)」の選任を家庭裁判所に申し立てることです。

相続財産管理人とは、亡くなった方の財産(借地上の建物など)を管理・清算するために、裁判所によって選ばれる専門家(主に弁護士など)です。地主様がこの申立てを行うことで、ようやく建物の収去や土地の明け渡しについて法的に交渉・手続きを進めるための「相手方」が作られるのです。

ただし、この手続きには注意点があります。この手続では、相続財産の内容等から相続財産清算人が円滑に事務を行うための費用(報酬を含む。)に不足が出る可能性がある場合、申立人が裁判所から予納金の納付を求められることがあります。もちろん、亡くなった方に十分な財産が残っていれば、そこから費用は支払われますが、財産がなければ予納金は戻ってこない可能性もあります。

非常に専門的で複雑な手続きとなるため、この状況に当てはまる場合は、速やかに専門家へ相談することをお勧めします。

より具体的な手順については、財産管理制度をご覧ください。

参照:相続財産清算人の選任

立ち退き料は必要?相場と判断基準を司法書士が解説

地主様が最も気になる点の一つが「立ち退き料」ではないでしょうか。果たして支払う必要があるのか、あるとすれば相場はいくらなのか、解説します。

まず大原則として、借地契約が期間満了によって明確に終了している場合、地主様に立ち退き料の支払い義務は法的にはありません。明け渡しは、契約終了に伴う当然の義務だからです。

一方で、先ほど解説した「黙示の更新」が成立していると判断される場合は、話が大きく異なります。この状態は法的に契約が続いているのと同じですから、地主様から契約の更新を拒絶するためには「正当事由」が必要になります。そして、地主様側の土地利用の必要性といった事情だけでは正当事由が十分でない場合に、その不足分を補う目的で、立ち退き料の提供が考慮されるのです。

立ち退き料に法律で定められた明確な相場はありませんが、一般的には借地権価格の数割程度や、建物の移転にかかる実費などを基準に、個別の事情を考慮して交渉で決められることが多いです。原則不要なケースと、正当事由を補うために必要となるケースがあることを、しっかりと理解しておくことが重要です。

残された建物の解体(建物収去)は誰の義務と費用か?

土地の上には、まだ借地人が建てた建物が残っています。この建物の解体、すなわち「建物収去」の義務と費用は、一体誰が負うのでしょうか。

この問題も、法的な原則は明確です。建物を収去する義務を負うのは、借地人(またはその相続人)であり、その費用も借地人側が負担するのが原則です。

しかし、これも現実には様々なケースがあります。

  • 相続人がいる場合:相続人が義務と費用を負担します。ただし、交渉を円滑に進めるため、地主様が解体費用の一部を負担する(立ち退き料に含めるなど)ことで、早期解決を図るケースも少なくありません。
  • 相続人が不明・相続放棄した場合:選任された相続財産管理人が、亡くなった方の財産の中から解体費用を捻出します。しかし、財産が全くない場合は、前述の通り、地主様が裁判所に納めた予納金から費用が支払われることになり、事実上、地主様の負担となってしまう可能性があります。

また、前述の「建物買取請求権」が借地人側にある場合は、地主様が建物を時価で買い取ることになり、収去義務も費用負担も地主様側に移ることになります。状況によって結論が大きく変わるため、慎重な判断が求められます。なお、亡くなった方の建物を解体する際の手続きについても、複雑な点が多いため注意が必要です。

複雑な借地問題は、一人で悩まず専門家にご相談ください

ここまでお読みいただき、契約満了後の借地問題が、いかに複雑で専門的な知識を要するかお分かりいただけたかと思います。特に、

  • 地代を受け取り続けており「黙示の更新」の可能性が高いケース
  • 借地人が亡くなり、相続人が不明または相続放棄されているケース

このような状況では、ご自身だけで対応しようとすると、かえって問題をこじらせてしまったり、法的に不利な立場に陥ってしまったりする危険性があります。

私たち司法書士のような専門家にご相談いただければ、まずは現在の状況を法的に正確に分析し、考えられるリスクと解決への道筋を丁寧にご説明します。その上で、必要であれば相続財産管理人選任の申立てといった裁判所の手続きまで、一貫してサポートすることが可能です。

長年心の中にあった重荷を、一人で抱え続ける必要はありません。円満な解決に向けて、私たちが全力でサポートいたします。まずはお気軽にお気持ちをお聞かせください。

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隣の家の木の枝が伸びてきた。切取ってもいい?(新民法)

2023-05-04

ゴールデンウイーク真っ只中です。旅行を楽しんでいる方もいらっしゃるでしょう。混雑を避け家でまったり日頃できなかった庭掃除などをされている方もいらっしゃるでしょう。そんな方のために今年の4月施行の新民法の「越境した竹木の枝の切取り」の制度をご紹介します。

 旧民法(233条)では、土地の所有者は、隣地の竹木の根が境界線を越えるときは自らその根を切り取ることができるが、枝が境界線を越えるときはその竹木の所有者に枝を切除させるよう請求できるにとどまっておりました。

 このような根と枝の取り扱いの違いは民法の七不思議の一つとされ、受験時代意味も分からず暗記をしました(本試験にも出題されました)。そればかりか竹木の所有者が枝を切除しない場合には、訴えを提起し切除を命ずる判決を得て強制執行の手続きを取る他なく、土地の所有者には過重な負担を強いる問題がありました。

 そこで、新民法は越境された土地の所有者、竹木の枝を切除させる必要があるという原則を維持しつつ、次のいずれかの場合には、枝を自ら切取ることができることとしました(223条Ⅲ項)。

①竹木の所有者に越境した枝を切除するよう催告したが竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき                                               ②竹木の所有者知ることができず、又はその所在を知ることができないとき              ③急迫の事情があるとき 

 ただ、法律の世界は自力救済が禁止され、相手に法的な請求をする場合は裁判所に訴えを提起し、判決を得て執行することが大原則です。この制度はこの自力救済禁止の原則に例外を認める制度です。なので①~③の要件を充たしているか、枝が本当に境界線を越えているか(境界線に争いがないか)を慎重に判断をする必要があると思います。                                尚、越境された土地所有者が自ら枝を切り取る場合の費用については、枝が越境して土地所有権を侵害していることや、土地所有者が枝を切り取ることにより竹木の所有者が本来負っている枝の切除義務を免れることを踏まえ、基本的には、竹木の所有者に請求できると考えられているようです(民法703条、709条)。 

 

        

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