自筆証書遺言保管制度の改正点を解説!2026年からの変更点も

自筆証書遺言の保管制度とは?法改正の歴史と全体像

「家族に迷惑をかけないように、遺言書を準備しておきたい」とお考えの方にとって、とても心強い制度が「自筆証書遺言書保管制度」です。この制度は、ご自身で書いた遺言書を、国(法務局)が安全に預かってくれるというもの。2020年7月にスタートし、多くの方に利用されています。

もともと、自筆証書遺言には大きな悩みがありました。それは、「紛失・改ざん・隠匿」のリスクです。せっかく大切な想いを込めて書いても、どこにしまったか忘れてしまったり、悪意のある誰かに書き換えられたり、あるいは相続人に見つけてもらえなかったりする可能性がありました。こうした問題を防ぐために、この保管制度が創設されました。

この制度に至るまで、自筆証書遺言は段階的に使いやすく改正されてきました。

  1. 2019年:財産目録の方式緩和
    以前は財産の一覧表(財産目録)もすべて手書きでしたが、パソコンでの作成や通帳のコピーを添付することが認められ、作成の負担が軽くなりました。
  2. 2020年:保管制度スタート
    法務局が遺言書を預かる制度が始まり、紛失や改ざんのリスクがなくなりました。
  3. 2026年(予定):オンライン手続き導入
    そして、2026年からはオンラインでの手続きも可能になり、さらに便利になる予定です。

このように、自筆証書遺言は時代に合わせて進化し、より多くの方が安心して利用できる仕組みへと変わってきています。この記事では、この便利な制度のメリットから、専門家だからこそお伝えしたい注意点、そして未来の変更点まで、詳しく解説していきます。

遺言書に記載する財産を整理する財産目録の作成も、以前より手軽になっています。

保管制度を利用する5つの大きなメリット

法務局に自筆証書遺言を預けることで、具体的にどのような良いことがあるのでしょうか。ここでは、特に知っていただきたい5つの大きなメリットをご紹介します。

  1. 紛失・改ざん・隠匿のリスクを抑えられる
    最大のメリットは、なんといっても遺言書を安全に保管できることです。原本は法務局で遺言者死亡後50年間、画像データは遺言者死亡後150年間保管されます。これにより、自宅保管で起こりがちだった「どこに置いたか忘れた」「相続人の一人が隠してしまった」といったトラブルを根本から防ぐことができます。
  2. 相続人の手間が大幅に減る「検認」が不要
    通常、自筆証書遺言が見つかった場合、相続人は家庭裁判所で「検認」という手続きを踏む必要があります。これは、相続人全員に遺言書の存在を知らせ、内容を確認する手続きで、戸籍謄本などの書類を集めて裁判所に出向く必要があり、時間も手間もかかります。しかし、保管制度を利用すれば、この検認が不要になります。残されたご家族の負担を大きく減らせる、非常に重要なポイントです。
  3. 形式的な不備を法務局がチェックしてくれる
    自筆証書遺言が無効になる原因の一つに、日付の書き忘れや署名・押印の漏れといった形式的なミスがあります。保管制度の申請時には、法務局の職員がこれらの形式要件をチェックしてくれるため、うっかりミスで遺言書が無効になるのを防げます。
  4. 相続人が遺言書の存在を確認しやすい
    遺言者が亡くなった後、相続人は全国どこの法務局でも遺言書が保管されているかどうかを照会できます。また、遺言書の写し(遺言書情報証明書)の交付も請求できるため、「遺言書の存在に誰も気づかなかった」という事態を避けられます。
  5. 公正証書遺言に比べて費用が安い
    専門家である公証人が関与する方法ですが、財産額に応じて数万円から数十万円の費用がかかります。一方、保管制度の利用手数料は、1件につき3,900円と非常に安価です。費用を抑えつつ、確実性を高めたい方にとって、魅力的な選択肢といえるでしょう。

知っておくべき注意点とデメリット【専門家が解説】

多くのメリットがある保管制度ですが、万能というわけではありません。むしろ、この制度の限界を知っておくことは、将来のトラブルを防ぐうえで重要です。司法書士として、特に強調しておきたい注意点とデメリットを解説します。

司法書士に遺言書の注意点について相談する老夫婦。専門家が書類を指差しながら丁寧に解説している。

最大の注意点:遺言の内容の有効性までは保証されない

これが最も重要なポイントです。法務局のチェックは、あくまで日付や署名、様式といった「形式面」に限られます。遺言書に書かれた「内容」が、法的に有効かどうか、そして将来の相続手続きをスムーズに進められるものかまでは、一切見てくれません。

例えば、こんなケースが考えられます。

  • 財産の記載が曖昧なケース
    「横浜市西区の土地と建物を長男に相続させる」と書いたとします。もし、同じ地域に複数の不動産を持っていた場合、どの物件を指すのか特定できず、不動産の名義変更(相続登記)ができない可能性があります。登記簿謄本通りに、地番や家屋番号まで正確に記載する必要があるのです。
  • 遺留分を侵害しているケース
    「全財産を長男に」と書いた遺言は、形式的には有効かもしれません。しかし、他の相続人(例えば次男や配偶者)には、法律で最低限保障された財産の取り分である「遺留分」があります。これを無視した内容は、かえって相続人間の深刻な紛争の原因となり、「遺留分侵害額請求」という金銭トラブルに発展する恐れがあります。
  • 遺言執行者が指定されていないケース
    預貯金の解約や不動産の名義変更など、遺言の内容を実現する手続きは、思った以上に煩雑です。手続きをスムーズに進めるためには、遺言執行者を指定しておくことが非常に重要ですが、この点についても法務局はアドバイスをくれません。

せっかく家族のために遺した遺言が、書き方一つで手続きの妨げになったり、争いの原因になったりしては本末転倒です。この制度は、遺言書を安全に保管するための制度です。遺言の内容が法的に有効で、相続手続きに支障がないものかどうかは、ご自身で、または専門家の助けを借りて確認する必要があります。

手続き上の注意点:代理申請不可・変更手続きなど

実際に制度を利用する上での、実務的な注意点もいくつかあります。

  • 必ず本人が法務局へ出向く必要がある
    申請は代理人ではできず、必ず遺言者ご本人が法務局の窓口に行く必要があります。そのため、お体の具合が悪い方や、外出が難しい方にとっては利用のハードルが高い場合があります。
  • 内容の変更や撤回には手間がかかる
    一度預けた遺言書の内容を修正したい場合、まず保管の申請を撤回し、遺言書を返却してもらう手続きが必要です。その上で、新しい遺言書を作成し、再度保管申請をしなければなりません。手続きのたびに法務局へ出向く手間がかかります。
  • 用紙のサイズや余白にルールがある
    保管できる遺言書は、A4サイズの紙で、余白(上5mm、下10mm、左20mm、右5mm)が定められているなど、細かいルールがあります。このルールに従っていないと、受け付けてもらえません。完璧な遺言書の作成は、思った以上に気を遣う作業なのです。

【2026年最新情報】オンライン手続きで何が変わるのか?

これまでご説明してきた手続きの不便さを解消するため、大きな法改正が予定されています。現在、一部の法務局では、メールによる保管申請書・添付書類・遺言書の形式面の事前チェックが試行的に実施されています。

この改正で、具体的に何がどう変わるのでしょうか。

2026年からの自筆証書遺言保管制度オンライン化のメリットを図解。従来の手続きとオンライン化後の手続きを比較し、申請書作成や法務局での滞在時間が短縮される様子を示している。

  • 申請書の作成や書類提出がオンラインで可能に
    一部の法務局では、保管申請書、添付書類、遺言書の形式面について、メールによる事前チェックを受けられる取組が試行されています。
  • 法務局での滞在時間が短縮
    対象となる法務局では、メールによる事前チェックを利用することで、窓口での確認を比較的スムーズに進められる場合があります。
  • 遠隔地の法務局への申請もしやすく
    例えば、実家の近くの法務局に保管したいけれど、今は遠方に住んでいるという場合でも、オンラインで事前手続きを済ませておけば、帰省のタイミングに合わせて短時間で申請を完了させることが可能になります。

ただし、注意点もあります。オンライン化されるのはあくまで「事前手続き」の部分です。最終的な遺言書原本の提出と本人確認のため、最低1回は遺言者本人が法務局に出向く必要があるという点は、これまでと変わりません。

とはいえ、このオンライン化は、利用者にとって大きな利便性の向上につながることは間違いないでしょう。ちなみに、公正証書遺言のデジタル化によりオンラインでの作成が可能になるなど、遺言に関する手続きはどんどん身近なものになっています。

自筆証書遺言保管制度の利用手続きと必要書類・費用

では、実際にこの制度を利用したい場合、どのような流れで進めるのでしょうか。手続きは大きく4つのステップに分けられます。

  1. 遺言書の作成
    まずは、法律の要件(全文・日付・氏名の自署、押印)と、保管制度の様式(A4サイズ、余白など)に従って遺言書を作成します。財産目録を添付する場合は、各ページに署名・押印が必要です。
  2. 必要書類の準備
    以下の書類を準備します。取得に時間がかかるものもあるため、早めに手配しましょう。
    • 保管申請書(法務局のサイトからダウンロードできます)
    • 本籍・戸籍の筆頭者の記載のある住民票の写し等
    • 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など顔写真付きのもの)
  3. 法務局への予約
    手続きは完全予約制です。保管を希望する法務局の窓口に直接電話するか、法務局のホームページからオンラインで予約します。
  4. 法務局での申請
    予約した日時に、作成した遺言書と必要書類を持参し、法務局の窓口で手続きを行います。職員によるチェックの後、手数料(収入印紙3,900円分)を納付し、保管証を受け取って完了です。

不動産を相続財産に含める場合は、事前に所有不動産記録証明書を取得し、正確な情報を記載することが大切です。法務省のサイトでは、申請書の様式や記載例なども公開されていますので、参考にするとよいでしょう。

あなたに合うのはどっち?保管制度と公正証書遺言の選び方

ここまで読んで、「自分にはどの遺言の方式が合っているのだろう?」と迷われた方もいらっしゃるかもしれません。ここでは、「自筆証書遺言保管制度」と、もう一つの代表的な方式である「公正証書遺言」のどちらを選ぶべきか、判断のヒントをお伝えします。

自筆証書遺言保管制度と公正証書遺言の比較表。費用、確実性、手間、秘密保持の4つの観点から、それぞれのメリット・デメリットを分かりやすくまとめている。

【自筆証書遺言保管制度がおすすめな方】

  • とにかく費用を抑えたい方
    手数料が3,900円と安価なため、コストを最優先に考える方に向いています。
  • 遺言の内容がシンプルで、相続関係も円満な方
    相続人が少なく、財産の種類も預貯金や自宅不動産のみといったシンプルなケースで、家族間の関係も良好であれば、この制度で十分な場合が多いでしょう。
  • 遺言の内容を誰にも知られたくない方
    公正証書遺言と違い、作成時に証人が不要なため、内容の秘密を保持できます。

【公正証書遺言がおすすめな方】

  • 内容の法的な有効性をできる限り高めたい方
    法律の専門家である公証人が内容を隅々までチェックし、作成するため、内容面の不備によるリスクを抑えやすい方法です。
  • 財産の種類が多い、または評価が複雑な方
    多数の不動産や株式、事業資産などをお持ちの場合、法的に間違いのない記載をするために公正証書遺言が適しています。
  • 相続人間のトラブルが予想される方
    「前の配偶者との間に子がいる」「相続人同士の仲が良くない」など、将来の紛争リスクが少しでもある場合は、公証人が関与する公正証書遺言を利用し、紛争リスクをできる限り抑えることが重要です。
  • 体が不自由で、外出が難しい方
    公証人に出張してもらい、自宅や病院で遺言書を作成することも可能です。

どちらの方式にも一長一短があります。遺贈など複雑な内容を検討している場合は、特に慎重な判断が必要です。ご自身の状況を客観的に見つめ、どちらが「家族の安心」に繋がるかを基準に選ぶことが大切です。

遺言書の内容に不安がある方は専門家への相談が安心です

自筆証書遺言保管制度は、遺言書を安全に「保管」してくれる、非常に画期的な制度です。しかし、この記事で繰り返しお伝えした通り、その役割はあくまでも保管まで。遺言書に込められたあなたの最後の想いが、法的な問題がなく、相続手続きで円滑に実現できる内容であることまでを保証してくれるわけではありません。

「この書き方で、本当に不動産の名義変更はできるだろうか?」
「家族が揉めないためには、どういう内容にすればいいのだろう?」
「自分の場合は、他にどんな備えが必要なんだろう?」

このような不安がある場合は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。遺言以外の終活の備えも含め、私たち司法書士は、あなたの想いを法的に有効な「かたち」にするお手伝いをします。専門家が内容を確認することで、将来の相続手続きが滞るリスクや、ご家族が争う悲劇を未然に防ぐことができます。

初回のご相談は無料です。あなたの、そして大切なご家族の未来のために、ぜひ一度、お気軽なお気持ちでお話をお聞かせください。

初回無料相談を予約する

keyboard_arrow_up

0452987602 問い合わせバナー 専門家による無料相談