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法定後見の申立て、何から始める?まず全体像を把握しましょう
「お父さんの預金が口座凍結でおろせない」「介護施設との入所契約を誰が結べばいいのか…」
ご家族の判断能力が低下し、預金の払戻しや施設入所契約などの手続きが難しくなったとき、多くの方が「成年後見」という言葉を意識し始めます。しかし、調べ始めると「申立て」「家庭裁判所」「審判」といった専門用語が多く、何から確認すればよいのか分かりにくい場合があります。
法的な手続きに不慣れな場合、不安や疑問を感じることは少なくありません。
この記事では、法定後見の申立てに必要な手続きの全体像、流れ、費用、準備すべき事項を順に整理します。手続きを段階ごとに確認することで、現在の状況に応じた対応を検討しやすくなります。
まずは肩の力を抜いて、ご自身の状況と照らし合わせながら読み進めてみてください。この記事が、法定後見の申立てを検討する際の参考になれば幸いです。
成年後見制度を利用すべきかどうかの判断基準については、成年後見制度の利用判断と代替策で体系的に解説しています。
法定後見申立て手続きの7ステップ|準備から後見開始まで
法定後見の申立ては、準備を始めてから実際に後見が開始されるまで、一般的に2ヶ月から4ヶ月程度の期間がかかります。ここでは、その全プロセスを7つのステップに分けて、時系列で見ていきましょう。全体の流れを掴むことで、今どの段階にいるのか、次に何をすれば良いのかが明確になります。

ステップ1:事前相談と方針決定
最初の一歩は、本当に成年後見制度を利用するのが最善なのか、申立ての方針を固めることです。この段階では、市区町村の高齢者福祉課などの窓口や地域包括支援センターが身近な相談先になります。
また、私たちのような司法書士にご相談いただければ、ご家族の状況や財産内容を丁寧にお伺いした上で、成年後見制度のメリット・デメリットを具体的にお伝えできます。場合によっては、任意後見や家族信託など、他の選択肢が適しているケースもあります。この最初の段階でしっかりと方針を決めることが、後の手続きをスムーズに進めるための最も重要な鍵となるため、ご本人様の状況を把握するため、ご本人様との面談をさせていただくこともございます。
ステップ2:必要書類の収集と申立書の作成
方針が決まったら、申立てに必要な書類の準備に取り掛かります。これは手続き全体で最も時間と手間がかかる部分かもしれません。特に重要なのが「医師の診断書」と「親族の同意書」です。
- 診断書:かかりつけ医に作成を依頼しますが、必ず家庭裁判所指定の書式でお願いする必要があります。医師によっては作成に数週間かかることもあるため、早めに依頼しましょう。
- 親族の同意書:申立人以外の相続人など、主要な親族から「後見を開始すること」や「候補者」について同意書をもらっておくと、手続きがスムーズに進みます。この段階でしっかり話し合い、協力を得ておくことが後のトラブルを防ぎます。また、この同意書を家庭裁判所に提出することにより、希望の候補者が選ばれることが多くなると言われております。
この他にも戸籍謄本や住民票、財産に関する資料など、集めるべき書類は多岐にわたります。私たち司法書士にご依頼いただければ、必要書類の収集や裁判所提出書類の作成をサポートできます。
ステップ3:家庭裁判所への申立て
書類一式が揃ったら、ご本人(後見を受けられる方)の住所地を管轄する家庭裁判所に申立書を提出します。申立人であるあなたのお住まいの地域の裁判所ではないので、注意が必要です。提出方法は、裁判所に直接持参するか、郵送でも構いません。申立てが受理されると、原則として取り下げることは難しくなりますので、提出は慎重に行いましょう。
管轄の裁判所がどこになるかは、家庭裁判所の管轄検索ページで確認できます。
ステップ4:家庭裁判所での面談(審問)
申立て後、必要に応じて家庭裁判所の調査官等が、申立人・本人・後見人候補者などから事情を聴くことがあります。面談の有無、時期、方法、出席者は家庭裁判所や事案によって異なります。この面談は、申立てに至った経緯やご本人の生活状況、財産の様子、候補者の適格性などを確認するために行われるものです。「何を話せばいいんだろう」と不安に思われるかもしれませんが、特別な準備は必要ありません。ありのままの事実を誠実に伝えることが何より大切です。
この面談は、手続きの中でも特に重要なポイントです。どのようなことが聞かれるかについては、後の章で詳しく解説しますね。
ステップ5:親族への意向照会と鑑定
面談後、家庭裁判所はいくつかの調査を進めます。一つは、申立てに同意していない親族(主に推定相続人)への意向照会です。裁判所から「成年後見の申立てがされていますが、ご意見はありますか?」といった内容の書面が送られます。
もう一つ、必要と判断された場合には、医師による「鑑定」が行われます。これは、ご本人の判断能力の程度をより詳しく医学的に判断するための手続きです。ただし、鑑定が行われるのは全体の数パーセント程度で、必ず実施されるわけではありません。鑑定が必要になると、追加で5〜10万円程度の費用と、1ヶ月程度の期間がかかることがあります。
ステップ6:審判と後見人の選任
全ての調査が終わると、家庭裁判所は後見を開始するかどうかを決定する「審判」を下します。そして、この審判と同時に、誰を成年後見人にするかを選任します。
ここで非常に重要な点があります。それは、申立書に候補者として記載したご家族が、必ずしも選ばれるとは限らないということです。ご本人の財産が多い、不動産の売却など複雑な手続きが予定されている、親族間で意見の対立がある、といったケースでは、中立的な立場の専門家(司法書士、弁護士など)が後見人に選ばれることが多くなっています。
ステップ7:審判の確定と後見登記
審判の結果は「審判書」という書面で関係者に郵送されます。この審判書を受け取ってから2週間、誰も不服申し立て(即時抗告)をしなければ、審判が「確定」します。この確定をもって、正式に後見がスタートします。
審判が確定すると、家庭裁判所から法務局へ後見内容の登記が依頼され、後見人としての職務が法的に記録されます。今後は、金融機関での手続きや契約などを行う際に、法務局で「登記事項証明書」を取得し、自分が後見人であることを証明しながら活動していくことになります。これで、一連の申立て手続きは完了です。
【費用一覧】法定後見の申立てと後見人への報酬はいくら?
成年後見制度を利用する上で、最も気になるのが「お金」の問題ではないでしょうか。費用は大きく分けて「申立て時にかかる初期費用」と「後見が始まった後に継続的にかかる報酬」の2種類があります。全体像を把握し、資金計画を立てていきましょう。
申立て時に必要な実費と専門家への依頼費用
まず、申立ての際に必ずかかる費用です。
| 項目 | 金額の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 収入印紙代 | 3,400円 | 後見申立手数料800円+登記手数料2,600円 |
| 郵便切手代 | 3,000円~5,000円程度 | 裁判所からの連絡用。管轄裁判所により異なる。 |
| 診断書作成料 | 数千円~1万円程度 | 医療機関によって異なる。 |
| 必要書類取得費用 | 数千円程度 | 戸籍謄本、住民票、不動産登記事項証明書など。 |
| (鑑定が必要な場合)鑑定費用 | 5万円~10万円程度 | 実施される場合のみ。 |
ご自身で手続きをすれば、これらの実費のみで申立てが可能です。もし、私たち司法書士に申立書類の作成支援をご依頼いただく場合は、上記の実費に加えて、10万円~15万円程度の報酬が別途かかります。
成年後見人へ支払う報酬の目安
後見がスタートした後、成年後見人が報酬を受け取るには、家庭裁判所への報酬付与の申立てが必要です。報酬額は後見人が勝手に決めるのではなく、家庭裁判所が事務内容や管理財産の内容などを総合的に考慮して決定します。
東京家庭裁判所の目安では、管理する財産額に応じて以下のように定められています。
- 基本報酬:月額2万円(管理財産額が1,000万円以下の場合)
- 管理財産額が1,000万円を超え5,000万円以下の場合は月額3~4万円
- 管理財産額が5,000万円を超える場合は月額5~6万円
ご家族が後見人になった場合、報酬を受け取らない(報酬付与の申立てをしない)ことも多いです。しかし、司法書士などの専門家が後見人に選任された場合は、原則として上記の報酬が発生します。この報酬は、ご本人が亡くなるまで、ご本人の財産から毎年支払われ続けることになるため、長期的な視点で考える必要があります。

費用が払えない場合に利用できる助成制度
「申立て費用や後見人への報酬を支払うのが難しい…」という場合でも、諦める必要はありません。多くの市区町村では「成年後見制度利用支援事業」という助成制度を設けています。
この制度を利用できれば、申立てにかかる費用や後見人への報酬の一部、または全部を自治体が助成してくれます。対象となるのは、住民税が非課税であるなど、経済的に困窮している方です。条件は自治体によって異なりますので、まずはお住まいの市区町村の役所の担当窓口や、地域包括支援センターに相談してみてください。相談先があるということを知っておくだけでも、少し気持ちが楽になるかと思います。
申立ての必要書類一覧とスムーズな集め方のコツ
申立てで最も労力がかかるのが、必要書類の収集です。ここでは、一般的に必要となる書類を一覧にしました。チェックリストとしてご活用ください。裁判所のウェブサイトで書式をダウンロードできるものも多いです。
【一般的に必要となる主な書類】
- 申立書
- 申立事情説明書
- 本人の財産目録及びその資料(預貯金通帳のコピー、不動産登記事項証明書など)
- 本人の収支予定表及びその資料(年金通知書のコピー、領収書など)
- 後見人等候補者事情説明書(候補者を立てる場合)
- 親族関係図
- 本人の戸籍謄本(発行後3ヶ月以内)
- 本人の住民票又は戸籍附票(発行後3ヶ月以内)
- 後見人等候補者の住民票又は戸籍附票(発行後3ヶ月以内)
- 診断書(家庭裁判所指定の書式、発行後3ヶ月以内)
- 登記されていないことの証明書(法務局で取得、発行後3ヶ月以内)
【状況によって必要になる書類】
- 親族の同意書(後見開始や候補者について同意がある場合)
- 愛の手帳や精神障害者保健福祉手帳のコピー(お持ちの場合)
- 不動産、生命保険、有価証券などの資料
【集める際のコツ】
- 診断書は最優先で!:医師に作成を依頼してから時間がかかることが多いので、一番初めに取り掛かりましょう。
- 有効期限に注意:戸籍謄本や住民票などは「発行後3ヶ月以内」という指定があります。早めに取得しすぎないように計画を立てましょう。
- 財産目録は正確に:財産目録は、後見人が管理する財産の基礎となる重要な書類です。預貯金だけでなく、不動産、保険、負債(ローンなど)も漏れなく記載する必要があります。
これらの書類を不備なく揃えるのは、慣れていないと大変な作業です。もしご自身で進めるのが難しいと感じたら、無理せず専門家を頼ることも検討してください。
誰が申立てできる?申立人と後見人候補者について
法定後見の申立てができる人(=申立権者)は、法律で決まっています。誰でも申立てができるわけではありません。
主な申立権者は、本人、配偶者、そして4親等内の親族です。

「4親等」と言われても、すぐにはピンとこないかもしれませんね。具体的には、以下の範囲の方々が含まれます。
- 1親等:子、親
- 2親等:孫、祖父母、兄弟姉妹
- 3親等:ひ孫、曽祖父母、おじ・おば、おい・めい
- 4親等:いとこ、大おじ・大おば、など
このように、かなり広い範囲の親族に申立てをする権利が認められています。また、ご本人に身寄りがない場合には、お住まいの市区町村長が申立てを行うこともあります。
ここで大切なのは、「申立てができる人」と「後見人になれる人」は別だということです。申立ての際に、ご家族を「後見人候補者」として推薦することはできます。しかし、最終的に誰を成年後見人に選任するかは、ご本人の財産状況や親族関係などを総合的に考慮して、家庭裁判所が判断します。この点は、申立てをする上で必ず理解しておきましょう。
より具体的な手順については、身寄りがない方の成年後見申立てをご覧ください。
家庭裁判所の面談では何を聞かれる?準備と心構え
「裁判所での面談」と聞くと、なんだか厳しく問い詰められるようなイメージを持ってしまい、緊張される方が非常に多いです。しかし、面談は決してあなたを試す場ではありません。調査官は、ご本人にとって最も良い形の後見を実現するために、必要な情報を集めようとしているのです。
面談の目的は、主に以下の点を確認することです。
- なぜ申立てをしようと思ったのか
- ご本人の現在の生活や心身の状況
- ご本人の財産がどれくらいあり、誰が管理しているか
- 後見人候補者は、どのような形でご本人を支えていきたいか
- 他の親族は、この申立てについてどう考えているか
具体的には、以下のような質問をされることが多いでしょう。
【よく聞かれる質問リスト】
- 申立ての動機について
「今回、申立てをしようと思われた一番のきっかけは何ですか?」
「いつ頃から、ご本人の判断能力に変化を感じ始めましたか?」 - ご本人の生活状況について
「最近、金銭管理はどなたがされていますか?ご自身でできていますか?」
「食事や身の回りのことは、お一人でできますか?」 - 財産について
「預貯金はどの銀行に、およそいくらくらいありますか?」
「不動産はお持ちですか?」「保険には加入されていますか?」 - 後見人候補者について
「後見人に選ばれたら、具体的にどのようなことをしてあげたいですか?」
「ご自身の生活状況や健康状態に問題はありませんか?」 - 親族関係について
「他のご兄弟は、今回の申立てについてご存知ですか?反対などされていませんか?」
これらの質問に対して、完璧な答えを用意する必要はありません。大切なのは、正直に、ありのままを話すことです。もし分からないことがあれば、「分かりません」「調べてから回答します」と伝えれば大丈夫です。私たち司法書士が申立てをお手伝いする場合、事前に面談で確認されやすい事項を整理し、裁判所の許可が得られる場合には面談への同席等のサポートを行います。
申立て前に知っておきたい注意点|後見人の権限と限界
成年後見制度は、判断能力が不十分な方を守るための非常に強力な制度ですが、万能ではありません。申立てをしてから「こんなはずじゃなかった」と後悔しないために、制度の限界や注意点も知っておきましょう。
1. 一度開始すると、原則としてやめられない
成年後見は、ご本人の判断能力が回復しない限り、亡くなるまで続きます。家庭の事情で「やっぱりやめたい」と思っても、簡単には取り下げられません。非常に重い責任が伴うことを覚悟する必要があります。
2. 財産はあくまで「本人のため」にしか使えない
後見人は、ご本人の財産を守るのが仕事です。たとえ家族であっても、ご本人の財産を家族の生活費に使ったり、お孫さんにお祝い金をあげたりすることはできません。「親のお金だから」という感覚でいると、後で裁判所から厳しく指摘される可能性があります。
3. 積極的な資産運用や相続税対策はできない
後見人の役割は、財産を「維持・管理」することです。リスクのある株式投資などの積極的な資産運用や、生前贈与といった相続税対策を行うことは、原則として認められていません。
4. 医療行為への同意はできない
延命治療を中止するかどうか、手術に同意するかどうかといった、ご本人の身体の根本に関わる医療行為への同意権(インフォームド・コンセント)は、後見人の権限には含まれていません。
5.保証人になることが出来ない 施設に入所する際に、施設側から後見人に保証人になることを求めれられることがありますが、利益相反行為になる恐れがあることから保証人になることは出来ません。
これらの制約を理解した上で、それでもなお制度を利用する必要があるのかを慎重に判断することが大切です。
手続きは自分でできる?司法書士に依頼するメリット
「これだけ複雑なら、専門家に任せた方がいいのだろうか…」そうお考えになる方もいらっしゃるでしょう。もちろん、時間をかけてご自身で申立ての手続きを行うことも可能です。
【自分で手続きする場合】
- メリット:専門家への報酬がかからず、費用を安く抑えられる。
- デメリット:多くの時間と手間がかかる。書類に不備があると、何度も裁判所とやり取りが必要になり、かえって時間がかかってしまうリスクがある。
一方で、私たち司法書士にご依頼いただくことには、費用以上のメリットがあります。
【司法書士に依頼するメリット】
- 時間的・精神的な負担を大幅に軽減できる
煩雑な書類の収集や作成をすべてお任せいただけるので、あなたはご家族のケアに専念できます。「何から手をつければ…」という精神的なストレスからも解放されます。 - 正確な書類作成で、手続きがスムーズに進む
私たちは、裁判所がどのような情報を求めているかを熟知しています。ポイントを押さえた正確な申立書を作成することで、その後の審理が円滑に進み、結果的に後見開始までの時間を短縮できる可能性があります。 - 裁判所への的確な事情説明ができる
ご家族の状況や申立ての背景には、書類だけでは伝わらない複雑な事情があるものです。私たちは、そうした事情を法的な観点から整理し、裁判所に的確に伝えるお手伝いをします。 - 法的な観点から必要事項を整理できる
後見の申立てでは、親族間で意見が分かれることもあります。司法書士は、裁判所提出書類の作成や手続きに関する相談を通じて、申立てに必要な事実関係や資料を整理するサポートを行います。
えなみ司法書士事務所では、初回のご相談は無料です。また、お忙しい方や外出が難しい方のために、ご自宅などご指定の場所への無料出張相談も行っております。平日はもちろん、土日祝日も夜21時まで対応しておりますので、お仕事帰りなど、ご都合の良い時間にご連絡ください。
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