数次相続の相続登記|申請書・協議書は1通?2通?司法書士が解説

数次相続とは?父、母の順で亡くなった場合の相続登記を司法書士が解説

大切なご家族を相次いで亡くされ、深い悲しみの中、複雑な相続手続きに直面されていることと存じます。特に「お父様が亡くなり、遺産分割協議が終わらないうちに、お母様も亡くなってしまった…」といったケースは、「数次相続(すうじそうぞく)」と呼ばれ、通常の相続よりも手続きが複雑になりがちです。

多くの方が、「遺産分割協議書や登記の申請書は、1通にまとめられるの?それとも2通必要なの?」という疑問で頭を悩ませていらっしゃいます。この書類の通数が変わると、手続きの手間や書き方が大きく変わってくるため、非常に重要なポイントなのです。

この記事では、相続登記を専門とする司法書士が、数次相続における最大の疑問点である「遺産分割協議書」と「登記申請書」の通数問題について、誰にでも分かるように、そして具体的に解説していきます。この記事では、ご自身の状況でどの方法を検討すべきか判断するための基本的な考え方を整理します。

なお、相続による不動産の名義変更手続きの全体像については、相続登記についてで体系的に解説していますので、併せてご覧いただくとより理解が深まります。

数次相続の全体像と「申請書・協議書の通数」が問題になる理由

数次相続の手続きは、大きく分けると「①戸籍などを集めて相続人を確定させる」「②相続人全員で遺産の分け方を話し合う(遺産分割協議)」「③法務局へ不動産の名義変更を申請する(相続登記)」という流れで進みます。

問題となるのは、②の遺産分割協議書と③の登記申請書です。なぜなら、お父様が亡くなったことによる相続(一次相続)と、お母様が亡くなったことによる相続(二次相続)という、二つの相続が連続して発生しているからです。

数次相続の手続きの流れを示す図解。戸籍収集、相続人確定、遺産分割協議、登記申請の4ステップと、協議書・申請書の通数が問題になるポイントを解説。

原則として、相続は一つひとつ個別に対応するため、協議書も申請書もそれぞれ作成する(合計2通ずつ)のが基本です。しかし、一定の条件を満たせば、これらを1通にまとめることができ、手続きをシンプルにできる場合があります。その判断基準がどこにあるのか、これから詳しく見ていきましょう。

【結論】遺産分割協議書が1通で済むか2通必要かの判断基準

数次相続において、遺産分割協議書を1通にまとめられるか、それとも2通作成する必要があるかの分かれ道は、「一次相続の話し合いに参加する人と、二次相続の話し合いに参加する人が、完全に一致するかどうか」で決まります。

言葉だけだと少し難しく聞こえるかもしれませんね。具体的なケースで見ていきましょう。

原則:一次相続と二次相続で相続人が異なるなら「2通」作成

遺産分割協議書を2通作成するのが、最も基本的で間違いのない方法です。

例えば、お父様(被相続人A)が亡くなり、相続人がお母様(B)とお子様(C・D)だったとします。そして、Aの遺産分割協議をしないうちにお母様(B)も亡くなり、Bの相続人はお子様(C)のみだった、というケースを考えてみましょう。

  • 一次相続(Aの相続)の当事者:BとC
  • 二次相続(Bの相続)の当事者:Cのみ

この場合、Aの相続については、亡Bの相続人としてその地位を承継したCを含めて協議することになります。Bの相続については、Bの相続人であるCが承継内容を整理する必要があります。そのため、それぞれの相続について、別々に遺産分割協議書を作成する必要があります。

【1通目:一次相続(父の相続)に関する遺産分割協議書】
これは、亡き母(B)の相続人であるCが、母の「相続人としての立場」を引き継いで、C自身と話し合う、という少し特殊な形になります。協議書には、「亡B相続人C」といった肩書を付けて署名押印します。

【2通目:二次相続(母の相続)に関する遺産分割協議書】
これは、母(B)の財産について、相続人であるCがどのように相続するかを記載するものです。(相続人がC一人の場合は不要なこともあります)

このように2通に分けることで、それぞれの相続関係が明確になり、後々のトラブルを防ぐことにも繋がります。万が一、相続人間で遺産分割協議がまとまらない状況では、それぞれの相続ごとに法的な手続きを進める必要も出てきます。

例外:一次・二次の相続人が同じなら「1通」にまとめられる

例外的に、遺産分割協議書を1通にまとめられる効率的なケースもあります。それは、一次相続と二次相続の最終的な協議参加者が全く同じになる場合です。

先ほどと同じ例で考えてみましょう。父(A)の相続人は母(B)と子(C)。その後、母(B)が亡くなり、その相続人は子(C)のみ。この場合、父(A)の遺産についても、母(B)の遺産についても、最終的にその分け方を決めることができるのは子(C)だけです。

このように、最終的な協議参加者が同一人物(このケースではC)になるため、一つの遺産分割協議書に、父(A)の遺産と母(B)の遺産の分け方をまとめて記載することが可能です。

この場合の協議書には、下記のように記載します。

被相続人 亡A
最後の住所 〜
最後の氏名 〜
生年月日 〜
死亡日 〜

被相続人 亡B
最後の住所 〜
最後の氏名 〜
生年月日 〜
死亡日 〜

上記被相続人両名の共同相続人であるCは、その遺産分割協議の結果、被相続人A及びBの遺産である下記不動産を、相続人Cが取得することに協議が成立した。

このように1通にまとめることで、書類作成の手間を減らし、手続きをスムーズに進めることができます。ただし、相続関係によっては、相続分の譲渡など他の手続きが関わるケースもあり、判断が難しい場合もあります。

相続登記の申請書は1通?2通?「中間省略登記」が鍵

遺産分割協議書の問題がクリアになったら、次は法務局に提出する登記申請書です。こちらも1通で済む場合と2通必要な場合がありますが、判断の基準は遺産分割協議書とは少し異なります。ここでのキーワードは「中間省略登記」です。

実務の現場では、「登記の申請書は1通か2通か?」「遺産分割協議書は1通か2通か?」というご質問は、本当によくいただきます。これらは数次相続手続きで特に確認が必要な点です。それぞれ判断基準が異なるため、協議書と登記申請書を分けて確認することが重要です。

数次相続の登記申請方法の比較図。原則である2回申請と、条件を満たした場合の中間省略登記(1回申請)の違いを視覚的に解説。

原則は2回申請:一次相続と二次相続を別々に登記する

不動産の権利が動いた歴史を正確に記録するという登記の原則から言えば、相続が発生した順番通りに登記を申請するのが基本です。

つまり、

  1. 【1回目の申請】父(A)から、不動産を取得することになった相続人へ名義変更する登記
  2. 【2回目の申請】母(B)が持っていた不動産の持分を、子(C)へ名義変更する登記

というように、2回の申請(申請書は2通)を行うのが原則的な手続きとなります。例えば、一次相続の段階で遺産分割協議が成立し、不動産を母(B)が相続することが決まっていたようなケースでは、この原則通りの手続きが必要になります。

中間省略で1回申請:条件を満たせば直接登記できる

多くのケースで利用でき、手続きの手間や費用を軽減できるのが「中間省略登記」という方法です。これは、特定の条件を満たす場合に限り、途中の登記を省略して、最後の名義人へ直接登記を移すことができる特例です。

父(A)→母(B)→子(C)と権利が移っていく場合でも、父(A)から直接、子(C)へ名義を移す登記申請(申請書1通)が可能になります。

この中間省略登記が認められる典型例は、中間の相続が単独相続と評価できる場合です。遺産分割や相続放棄などにより、結果として中間の相続人が単独で権利を承継したと整理できるかを確認する必要があります。

例えば、父(A)の遺産について、母(B)と子(C)が話し合い、Cがすべて相続すると決める前に母(B)が亡くなったとします。この場合、母(B)の相続人であるCが、母の立場を引き継いで遺産分割協議を行い、結果としてCが父(A)の不動産をすべて相続することになれば、中間者である母(B)は結果的に不動産を取得しないことになります。このようなケースでは、中間省略登記が可能です。

中間省略登記を行う際の登記申請書には、「登記の原因」として次のように記載します。

(原因)
(1)令和〇年〇月〇日 B相続
(2)令和×年×月×日 相続

このように、二次相続の発生日(母が亡くなった日)と「相続」というシンプルな記載にするのが特徴です。なお、相続人が相続放棄をした場合なども、単独相続となり中間省略登記が可能になるケースがあります。

また、相続登記の義務化に伴い、手続きを簡略化する「相続人申告登記」という制度も始まっています。詳しくは法務省のウェブサイトもご確認ください。

参照:相続人申告登記について|法務省

数次相続の相続登記手続きの流れと必要書類

理論的な部分がわかったところで、次に具体的な手続きの流れを見ていきましょう。数次相続の登記は、通常の相続に比べて集める書類も多く、複雑になりがちです。一つひとつのステップを確実に進めることが重要です。

ステップ1:戸籍謄本を収集し相続人を確定させる

相続手続きでは、まず戸籍謄本を収集して相続人を確認します。数次相続では、一次相続の被相続人(父)と二次相続の被相続人(母)の、それぞれについて「出生から死亡まで」の連続した戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本)が必要になります。

なぜ出生まで遡るかというと、ご自身が知らない相続人(例えば、前妻との間の子など)がいないかを確定させるためです。古い戸籍は手書きで読みにくかったり、本籍地が何度も変わっていて全国の役所へ請求が必要になったりと、非常に手間と時間がかかる作業です。ここでつまずいてしまう方も少なくありません。

相続財産にどのような不動産があるか正確に把握できていない場合は、まず不動産を調査する必要があります。より具体的な手順については、所有不動産記録証明書の請求手続きをご覧ください。

司法書士が数次相続で必要となる大量の戸籍謄本について相談者に説明している様子。

ステップ2:遺産分割協議書と登記申請書を作成する

戸籍の収集が終わり、相続人全員が確定したら、これまでの解説を元に、ご自身のケースに合わせて遺産分割協議書(1通または2通)を作成します。相続人全員が内容に合意したら、署名し、実印を押印します。

次に、登記申請書を作成します。申請書のひな形は、法務局のウェブサイトで入手できますが、数次相続の場合は「登記原因」や「相続人」の書き方が特殊で、専門的な知識が求められます。少しの間違いでも法務局から修正を求められ、手続きが滞ってしまう原因になりますので、慎重に作成する必要があります。

相続人の中に海外にお住まいの方がいる場合は、手続きがさらに複雑になります。詳しい手順については、海外在住の相続人がいる場合の署名証明書・在留証明書などの必要書類をご覧ください。

ステップ3:法務局へ登記申請し、登録免許税を納付する

完成した申請書と、収集した戸籍謄本、遺産分割協議書、印鑑証明書、固定資産評価証明書などの必要書類一式を、不動産の所在地を管轄する法務局へ提出します。申請と同時に、登録免許税という税金を納付する必要があります。

登録免許税の額は、原則として「不動産の固定資産税評価額 × 0.4%」で計算します。

ここで重要なのが、数次相続における免税措置です。父(A)から相続人(B)への土地の相続登記について、母(B)がその登記をしないまま亡くなってしまった場合、Bが受けるはずだった土地の相続登記にかかる登録免許税は免除される可能性があります(租税特別措置法第84条の2の3第1項)。この適用を受けるためには、申請書にその旨を記載する必要があるため、知っているかどうかで費用が大きく変わってくる可能性があります。当事務所でも、この制度を活用して登録免許税を抑えることができた事例があります。

申請後、法務局の審査(1〜2週間程度)を経て、問題がなければ登記が完了し、登記識別情報通知(いわゆる権利証)が発行されます。

数次相続の登記、自分でやる?専門家に任せる?

ここまでお読みいただき、数次相続の手続きがいかに複雑かをご理解いただけたかと思います。では、この手続きを自分で行うべきか、それとも専門家である司法書士に依頼すべきでしょうか。

【ご自身で手続きするメリット・デメリット】
メリットは、司法書士への報酬がかからないため、費用を抑えられる点です。デメリットは、膨大な時間と手間がかかること、そして書類の不備で手続きが何度もやり直しになるリスクがあることです。特に、戸籍の収集や専門的な申請書の作成で挫折してしまうケースは少なくありません。

【司法書士に依頼するメリット・デメリット】
メリットは、複雑で負担の大きい手続きについて、専門家のサポートを受けながら進められることです。戸籍の収集から遺産分割協議書・登記申請書の作成、法務局とのやり取りまで一括して代行するため、お客様の時間的・精神的な負担を大幅に軽減できます。また、専門家として事案に応じた進め方を検討し、登録免許税の免税措置などが適用できる可能性についても確認します。デメリットは、報酬費用がかかる点です。

数次相続は、通常の相続よりも判断が難しいポイントが多く、小さなミスが大きなトラブルに発展しかねません。もし、少しでも手続きに不安を感じたり、何から手をつけていいか分からなかったりするようでしたら、一度専門家にご相談いただくことを強くお勧めします。

当事務所では、相続に関するご相談は無料で承っております。お客様のご状況を丁寧にお伺いし、どのような手続きが必要か、費用は総額でいくらかかるのかを明確にご提示いたします。まずはお気軽にお話をお聞かせください。

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