Archive for the ‘相続’ Category

マンション管理組合による相続財産清算人の申し立て~債権を有しない場合でも認められるか?

2024-07-06

 法律上、相続財産清算人の選任の申立てができるのは「利害関係人」または検察官に限らております(民法952条)。この「利害関係人」には法律上の利害関係人である特別縁故者、相続債権(債務)者、特別受遺者などが含まれ、例えばマンションに居住していた住民が、生前に管理費・修繕積立金を支払わないまま死亡した場合は、マンション管理組合は相続債権者として申立てが認められております。    では、亡くなった住民が管理費用等を生前滞納することなく、死亡後も口座から引き落され、マンション管理組合が債権者となり得ない場合でも申立ては認められるのしょうか?

 当事務所においては、マンション管理規約をもとに裁判所に提出する「申立の理由」を作成することで、相続財産清算人の選任を認めていただいております。たとえ、申立人に事実上の利害関係しかなかったとしても、亡くなられた住民のプライバシー等の保護されるべき法的利益と認められなった場合のマンションの近隣住民に与える損害を衡量すれば、申立を認めるのは妥当な結論と考えております。

 当事務所では、相続財産清算人選任の申立てにも積極的に相談を受け付けております。      実際には、マンションの住民の死亡が発見され、まず相続人の捜索の依頼のご相談になるかと思います。相続人が発見された場合は相続登記をする必要があり、発見されない場合(発見されても相続全員が相続放棄がされた場合も含む)は相続財産清算人を検討する必要があります。

 まずは、お気軽にご相談ください。                                

相続放棄が認められた例~照会書が来ないまま認められた例

2024-07-04

 皆様、梅雨真っ只中いかがお過ごしでしょうか?私は、雨と酷暑の毎日でヘトヘトです。

先日、申述した相続放棄が照会書・回答書が来ず、少し待っていたら相続放棄を認める相続放棄申述受理通知書が送られてくる事例が発生しました。この事例は、母親が死亡し、その母親の作った借金の請求書が3か月を経過した後送られてきており、その母親は申述人が幼少の頃父親(申述人は父親に引き取られた)と離婚し、その後疎遠となっていたという事情がありました(事例の内容は事実とは少し変更しております)。3か月を経過しているので上申書には、上記の事情を具体的に記載することで母親の財産を調査できない合理的理由を記載したほか、請求書のコピー(到達日も記載)及び両親離婚時の戸籍謄本を法定の必要書類の他に添付しました。

 照会書・回答書は、裁判所が申述人の相続放棄の意思確認、単純承認事由の有無等の相続放棄の要件の充足を確認するためのものです。3か月以内に相続放棄ができない合理的理由につき戸籍謄本や住民票(母親死亡時の住所と申述人の住所がかなり離れている)を添付することにより要件の充足は明らかであるとし、照会書・回答書により申述人に確認する必要がないと裁判所は判断したものかもしれません。

 ただ、このような照会書がこないまま相続放棄が認めらるのはレアケースであり、照会書の到達が遅れている場合は、裁判所に問い合わせるのが原則であることは変わりがないと考えています。

 当事務所では、相続放棄、相続登記、遺言書作成等の相続手続きに関するご依頼を多数いただいております。お気軽にお問い合わせください。

相続登記の報酬

2024-06-10

6月1日に横浜駅前に事務所移転しました。それに伴い報酬特に相続登記の報酬を上げるべきか検討しておりました。結論出ました。

当面、今までの価格77,000円を維持することにしました。

此の価格は、一世帯の土地(前面道路の持分含む)と建物を含む登記申請、戸籍等の取得報酬、遺産分割作成費用を含む価格です(実費は除く)。横浜駅周辺では破格の価格と思います。

皆様からのご相談を心よりお待ちしております(見積りの相談だけでも大歓迎です)。

一部の相続財産の認識がある場合の熟慮期間の起算点の繰下げ(相続放棄⑦)

2023-08-08

例えば相続人は被相続人の不動産と預貯金についての認識をし、それらを相続人は遺産分割したが、熟慮期間経過後に予想外の高額の債務の支払いの請求を受けた場合、熟慮期間の繰下げをし、相続放棄ができないか?という論点があります。

この点判例は、熟慮期間の繰下げが認められる場合は、原則として相続人が被相続人に相続財産が全く存在しないと信じた場合に限られ、一部の相続財産の認識がある場合はもはや相続放棄は原則として認められない立場をとっています。ただし、相続人に消極財産の不存在を信じたことについて合理的な理由がある場合は例外的に繰下げをし、相続放棄を認めています。

  例えば①相続人は既に95才で被相続人とは交流はなく、認識していた積極財産の価値も乏しい場合は、消極財産の不存在を信じたことについて相当の理由があるとして繰下げを認めております。

  また、②被相続人が残した遺言により相続人自らに積極財産や消極財産は全く無く、他の債務についても遺言執行者である銀行から他の相続人に承継する手続きが完了した旨の報告を受けていた場合も、消極財産の不存在を信じたことについて相当の理由があるとして繰下げを認めております。

  さらに、③相続債務の不存在を誤信しその誤信に相当の理由がある場合は、相続放棄の手続きをとらずにした遺産分割協議は要素の錯誤により無効となり、相続放棄を認めております。

 他方、下級審の判例を含めると繰下げを認めない判例も多数あります。

熟慮期間の繰下げについては、「3か月を経過しているからもう無理!」と自分で判断せず、一度ご相談ください。

熟慮期間の起算点について~起算点の繰下げが認められなかった例(相続放棄⑥)

2023-08-08

前回の記事では繰下げが認められる基準は、相続人と被相続人との生前の交流状況、債務の内容が被相続人の生活歴、生活状況等から想定しうるものであるか否か等から、相続人に相続財産の有無の調査を期待することの著しい困難性にあるとし、繰下げが認められた例を紹介しました。

今回の記事では反対に繰下げが認められなかった裁判例を紹介します。いずれも上記基準の下に相続財産の調査の期待可能性の有無により判断しております。

①夫が死亡した事件について、相続人のうち妻は13年以上別居で交流はないが、子供たちは夫と交流があり、夫の生活状況について認識があった場合は、たとえ夫に不動産や預貯金がなかったとしても子供たちに他に相続財産の有無の調査を期待することが困難とは言えないとして、起算点の繰下げを認めませんでした。

②妻の債務を保証した夫の債務の相続放棄について、たとえ被相続人が会社員であっても妻がブティックを経営している場合は、被相続人はその債務を保証している蓋然性があり、同居の相続人は相続財産の有無の調査を期待することが困難とは言えないとして、起算点の繰下げを認めませんでした。

相続放棄のご相談を受け付けております。お気軽にお問い合わせください。

熟慮期間の起算点~繰下げが認められた例~(相続放棄⑤)

2023-08-03

 前々回の記事(相続放棄③)で、判例(最判昭59.4.27)は熟慮期間の起算点を「相続人が相続財産の全部または一部の存在を認識したとき又は通常これを認識しうべき時から」とし、繰下げていることをご紹介しました。

 今回は、これを更に深掘り、この繰下げがいかなる場合に認められるかについて、根拠や基準とともに具体例をご紹介します。

 繰下げが認められる根拠は、要するに相続放棄ができなくなることの自己責任が問えない場合に繰下げが認められております。即ち、判例の言葉を借りれば「相続開始原因及び自己が相続人になったことを知った時点において3か月以内に相続放棄をしなかったのが、被相続人の生活歴、被相続人と相続人との間の交際状態その他諸般の状況からみて当該相続人に対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があって、相続人において被相続人に相続財産が全く存在しないと信じるについて相当の理由がある場合」には相続人が相続放棄をしなかったのはやむを得ないことを根拠としております。

 このことから、繰下げが認められる基準は、相続人と被相続人との生前の交流状況、債務の内容が被相続人の生活歴、生活状況等から想定しうるものであるか否か等から、相続人に相続財産の有無の調査を期待することの著しい困難性にあると考えられております。

 そこで、具体的例として、被相続人の生前の不動産取引主任者としての不法行為債務について、被相続人が高齢で、勤務状況も1日2,3時間しかない状況下で発生した不法行為債務については、被相続人が調査することは期待しがたいとして繰下げが認めております。

 また、被相続人は相続人が10才の頃に家出し、死亡するまでの20年にわたり交際が無い場合、相続人は被相続人の生活状況を一切把握しておらず、相続財産の調査を期待することが著しく困難な事情があるとして繰下げを認めております。

 以上、熟慮期間の起算点の繰下げの根拠、基準、繰下げが認められた具体例をご紹介しました。

次回は、繰下げが認められなかった事例をご紹介します。

当事務所では、横浜の相続放棄の案件を積極的に受任しております。                お気軽にお問い合わせください。

そもそも相続放棄の申立ては認めらるのか?(相続放棄④)

2023-08-02

 前回熟慮期間の起算点についての記事を書き、たとえ被相続人の死亡から3年が経過していても一定の事情があれば起算点の繰り下げが認められ、相続放棄の申立てが認められることを書きました。                                     ただ、正確にはこの相続放棄の申立てには①裁判前に申立てる方法と②裁判中に申立てる方法があります。即ち①の方法は、例えば事業を行っていた父親が亡くなった場合に相続人の方から相続債務の負担を回避するために事前予防的に申立てる方法です。②の方法は、例えば父親の債権者から債務の返済を請求され訴状送達を受けて、事後的に相続放棄を申立てる方法です。

 実際当事務所のような司法書士事務所においては①の方法の相続放棄の申立てを想定しており、②の方法については、司法書士が扱える債務額が140万円までに限られていることから弁護士が扱うことが多くなります。

 そこで、①の方法の相続放棄の申立てはそもそもどれくらいの割合で認められるのか?熟慮期間の起算点の繰り下げは認めてもらえるのか?というご質問を受けることがあります。

 結論として相続放棄の要件を欠いていることが明白でない限り、ほとんど認められるとお考え下さい。①の相続放棄の受理は、厳格な手続きで行われる裁判手続き(訴訟)とは異なり、簡易迅速な手続きで行われるため、事実の有無が証拠により厳格に判断されないからです。(故に事後の裁判において覆され無効となる可能性もあります。)

 当事務所では、横浜市での相続放棄も積極的に受任しております。裁判が起こされた場合の弁護士の紹介もしております。お気軽にお問い合わせください!

 

熟慮期間の起算点について(相続放棄③)

2023-07-28

 相続放棄のついての最も多い質問が「相続放棄は何時迄にしなければならいか?」という熟慮期間についての質問です。

単純承認・限定承認・相続放棄のどれを選択するかは、「相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月以内に決めなければなりません(民法915条1項。この期間を熟慮期間と言います。)選択しないまま3か月が経過すると単純承認したことになり(同法921条2号)、積極財産のみならず負債等の消極財産も全て相続します。

この「相続人が自己ために相続の開始があったことを知った時」の意義について、判例上大別して二つの点から絞りがなされております。

相続人となったことの認識の必要性からの絞り

 例えば、第一順位の相続人が相続放棄をしたが、第二順位の相続人がそれを知らなかった場合、第二順位の相続人は自分が相続人となっていたことを知る由もなく、相続放棄することができる法的地位あることを認識していないため相続放棄の手続きを期待できないできないことから、判例は熟慮期間の起算点は「被相続人の死亡を知ったことかつ相続人になったことを覚知した時から」として相続人であることの認識を必要として起算点を繰り下げています(大判大10.10.20等)。

相続財産の存在についての認識又は認識の可能性からの絞り

 次に、仮に自身が相続人であることを知ったとしても、相続人と被相続人が長い間音信不通で交流がなかった場合や被相続人には相続財産が全くないと思い何もしなかったような場合に、思いもよらず債権者から請求を受け、もはや相続放棄ができないとすると相続人に酷な場合が生じる。そこで、判例は「熟慮期間は相続人が相続財産の全部または一部の存在を認識したとき又は通常これを認識しうべき時から起算すべき」とし、起算点を繰り下げています(最判昭59.4.27)。

 ただ、実務では、上記の判例が踏襲されているものの、起算点の繰り下げは具体的事案ごとにケースバイケースで判断されています。

次回以降、判例問題となったケースを参考にいかなる場合に起算点の繰り下げが認められたか紹介していきます。

消極財産(債務)を調べる方法(相続放棄②)

2023-07-17

 亡くなられた被相続人の相続財産には、不動産や預貯金等の積極財産の他に、借入金や税金等の日常生活によって生じた債務等の消極財産があります。この消極財産が存在すれば相続人が返済をする必要があり、相続放棄を検討することが必要になるため、まず消極財産が存在するか否か及びその額について調べる方法を知っておく必要があります。

①まず、被相続人の遺品の中から契約書の存否を確認する。

②次に、契約書が存在していなくても、預金通帳の出金履歴や親への郵便物税務申告書納税通知書、により債権者を把握し、債権者に照会する。

③さらに、金融機関、クレジット会社及び貸金業に対する借入は、信用情報機関に記録されているため、個人信用情報の開示を受けることにより借入先を把握することが可能です。

   この信用情報機関は、3つあり、各々以下の企業が加盟しております。

 (最近では、郵送での照会の他、インターネットを利用した照会も可能となっている機関もあり、より調査しやすくなっております。)

信用情報機関主たる加盟企業
株式会社日本信用情報機構(略称:JICC) (https://www.jicc.co.jp)消費者金融
株式会社シ-・アイ・シー(略称:CIC) (https://www.cic.co.jp)クレジットカード会社
一般社団法人全国銀行協会(略称:全銀協) (https://www.zenginkyo.or.jp)銀行

相続放棄をした場合、生命保険金を受け取れるか?(相続放棄①)

2023-07-13

相続放棄すると亡くなった父や母の生命保険金は受け取れるかについては、保険契約または約款などにより、保険金受取人がどのように定められているかにより結論が異なります。以下、3つのケースについて解説します。

1-1.特定の保険金受取人が指定されているとき

生命保険契約において、特定の保険金受取人が指定されているときには、相続放棄をしても生命保険の死亡保険金を受け取ることができます。死亡保険金を相続するわけでは無く、生命保険契約に基づき、保険金受取人としての固有の権利により受け取るからです。

1-2.保険金受取人が相続人となっている場合

生命保険契約で特定の保険金受取人が指定されておらず、約款などにより保険金受取人が相続人となっている場合も、相続放棄をしても生命保険の死亡保険金を受け取ることができます

この場合の本件保険金請求権は、保険契約の効力が発生した被相続人死亡と同時に、相続人の固有財産となり、被保険者である被相続人の相続財産より離脱しているとされます。相続財産では無いから、相続放棄しても受け取ることができるわけです。

1-3.保険金受取人が被相続人となっている場合

生命保険契約または約款により、被相続人が保険金受取人となっているときには、相続放棄をすれば保険金を受け取ることはできません。この場合には、被相続人の保険金請求権を相続することにより、保険金を受け取る権利を持つことになるからです。

相続放棄は、多くの論点があり複雑です。自分一人での思い込みだけで考えることは危険です。当事務所では、相続放棄の相談も積極的に受けております。お気軽にご相談ください!

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