会社の代表者住所を登記簿で非表示にする方法【2026年最新版】

会社の登記簿で自宅住所が公開…その不安、軽減につながる可能性があります

「会社を設立したけど、登記簿に自宅の住所が載ってしまうのは不安…」「もしストーカー被害に遭ったらどうしよう」「迷惑な営業電話やDMが自宅に届くようになったら嫌だな」

会社の代表を務める方、これから起業を考えている方の中には、このような悩みを抱えている方も少なくないのではないでしょうか。ご自身のプライバシーが誰でも閲覧できる形で公開されることへの不安は、決して特別なものではありません。

そのお悩み、あなただけではありません。そして、その不安を解消するための具体的な方法が、ついに登場しました。

2024年10月から始まった「代表取締役等住所非表示措置」という新しい制度です。この記事を最後までお読みいただければ、この制度がどのようなもので、あなたが利用すべきかどうか、そして具体的な手続きの方法まで、すべてご理解いただけるはずです。あなたの不安を安心に変えるための第一歩、一緒に見ていきましょう。

代表取締役の住所非表示、2024年10月から可能に

これまで、会社の代表取締役の住所は、登記事項証明書(登記簿謄本)を取得すれば誰でも知ることができました。しかし、プライバシー保護への関心の高まりを受け、2024年10月1日から、一定の条件のもとで代表取締役などの住所を非表示にできる制度がスタートしたのです。

この「代表取締役等住所非表示措置」を利用すると、登記事項証明書に記載される住所が、番地までではなく「市区町村」までの表示となります。(例:「神奈川県横浜市西区北幸一丁目11番1号」→「神奈川県横浜市西区」)

これにより、自宅の詳しい場所が第三者に知られるリスクを大幅に減らすことができます。この制度は、特に個人情報保護を重視する現代社会の要請に応える形で創設されました。商業登記の全体像については、商業登記の全体像で体系的に解説しています。

代表取締役の住所非表示措置の概要図。措置前は登記簿に完全な住所が記載されているが、措置後は市区町村までの表示に変わることを示している。

対象は「株式会社」の「代表取締役・代表執行役・代表清算人」のみ

とても便利な制度ですが、残念ながらすべての会社・役員が利用できるわけではありません。対象は厳密に定められています。

  • 法人の種類:株式会社のみです。近年人気の合同会社や、特例有限会社、NPO法人、一般社団法人などは対象外となります。
  • 役職:代表取締役、代表執行役、代表清算人に限られます。同じ役員でも、平取締役や監査役の住所は、もともと登記簿には記載されません。

もしあなたが合同会社の代表社員などで「対象外だった…」とがっかりされた場合でも、代替策は考えられます。記事の最後で触れますので、ぜひ読み進めてみてください。

表示は「市区町村」まで。過去の住所は非表示にできない点に注意

この制度を利用する上で、非常に重要な注意点が2つあります。

まず1つ目は、住所が完全に消えるわけではないという点です。前述の通り、表示は「市区町村」までとなります(東京都の特別区や政令指定都市の場合は「区」まで)。これにより個人の特定は難しくなりますが、ゼロになるわけではないことは理解しておく必要があります。

そして2つ目の、より重要な注意点は、「非表示にできるのは、これから登記する新しい住所だけ」という点です。つまり、この措置を申し出る前にすでに登記されていた過去の住所は、一定期間は会社の履歴(履歴事項全部証明書)で確認できる場合があります。この点は誤解されている方も多いので、制度の限界としてしっかり覚えておきましょう。

本当に利用すべき?メリット・デメリットから考える判断基準

プライバシーを守れるならぜひ利用したい、と考えるのは自然なことです。しかし、この制度にはメリットだけでなく、事業運営上のデメリットも潜んでいます。ここでは、あなたが本当にこの制度を利用すべきか、冷静に判断するための材料を提供します。

【メリット】プライバシー保護と精神的な安心感

最大のメリットは、何と言ってもプライバシーが保護されることです。

自宅住所が公開されていると、ストーカー被害のリスクや、見知らぬ業者からのダイレクトメール・訪問営業、さらには家族にまで危険が及ぶ可能性もゼロではありません。特に、女性起業家の方や、自宅兼事務所でビジネスをされている方にとって、この不安は切実なものでしょう。

住所を非表示にすることで、これらのリスクを物理的に遠ざけることができます。それによって得られる「何かあったらどうしよう」という不安からの解放、つまり「精神的な安心感」は、事業に集中するための大切な基盤となるはずです。

【デメリット】融資や取引で不利になる可能性も

一方で、デメリットも無視できません。特に、金融機関からの融資や、新しい取引先との与信審査に影響が出る可能性があります。

金融機関や取引先は、会社の信用度を測る一つの材料として、代表者の情報を確認します。その際に住所が非表示になっていると、「何か隠しているのではないか?」という印象を与えてしまう可能性は否定できません。結果として、融資の審査が慎重になったり、追加で住民票などの書類提出を求められたり、最悪の場合、取引そのものを見送られたりするケースも考えられます。

もちろん、すべてのケースで不利になるわけではありませんが、このような潜在的なリスクがあることは、利用する前に必ず理解しておくべきです。

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【司法書士の見解】あなたが利用を検討すべきケースとは

では、メリットとデメリットを踏まえた上で、どのような方がこの制度の利用を検討すべきなのでしょうか。司法書士としての見解を述べさせていただきます。

【積極的に利用を検討すべき方】

  • 自宅で事業を行う女性起業家や、世間に顔が知られている方
  • 過去にストーカーなどの被害に遭った経験があり、身の安全を最優先したい方
  • BtoCビジネスが中心で、不特定多数の顧客と接する機会が多い方
  • 当面、金融機関からの大規模な融資を計画していない方

【慎重に判断すべき方】

  • 近々、事業拡大のために大規模な融資を申し込む予定がある方
  • BtoB取引が中心で、取引先の信用調査が厳しい業界で事業をされている方
  • 会社の信頼性や透明性を何よりも重視する事業を展開している方

最終的な判断は、ご自身の事業内容やライフプラン、そして「安心」と「信用」のどちらを優先したいかによって変わってきます。ご自身の状況に照らし合わせて、じっくり考えてみてください。

【状況別】代表者住所を非表示にするための手続きと必要書類

制度を利用すると決めた方のために、具体的な手続きの流れを解説します。「これから会社を設立する」場合と「すでに会社を経営している」場合で、取るべきアクションが異なります。

ケース1:これから会社を設立する場合

これから会社の設立を考えている方にとっては、最も効果的なタイミングです。設立登記の申請と同時に非表示措置の申出を行うことで、最初から登記簿に自宅の番地が載ることを防げます。

手続きの流れは以下のようになります。

  1. 定款の作成・認証など、通常の会社設立手続きを進める。
  2. 法務局へ設立登記を申請する際に、「申出書」を添付する。
  3. 申出書には、非表示を希望する旨と、添付書類について記載します。

設立時に必要な添付書類は、会社が上場会社か非上場会社か等によって異なります。例えば非上場会社の場合、本店宛の配達証明郵便の送付を証する書面、代表取締役等の氏名・住所が記載された市区町村長等の証明書(住民票の写し等)、実質的支配者の本人特定事項を証する書面などの添付が求められます。これらは公証役場での定款認証時に準備できるものもあるため、司法書士など専門家と相談しながら進めるとスムーズです。

ケース2:すでに会社を経営している場合

すでに会社を経営されている方がこの制度を利用するには、何らかの登記申請を行うタイミングで、同時に非表示措置の申出をする必要があります。

具体的には、以下のようなタイミングが考えられます。

  • 代表取締役が引っ越した際の「住所変更登記」
  • 任期満了に伴う「役員変更(重任)登記」

特に、過去の住所が登記簿に残らないようにするためには、引っ越しに伴う「住所変更登記」のタイミングが最も効果的です。単に役員が重任するだけの役員変更登記の際に申し出ても、過去の住所は履歴として残ってしまう点に注意が必要です。

非上場会社の場合、申出書に加えて以下の3点の書類が必要になるのが一般的です。

  1. 本店所在場所における事業の実在性を証する書面(公共料金の領収書など)
  2. 代表取締役の住所を証する書面(住民票など)
  3. 実質的支配者情報一覧の写しなど

より詳しい情報については、法務省のウェブサイトもご確認ください。

参照:法務省:代表取締役等住所非表示措置について

手続きで迷ったら?専門家への相談も選択肢に

「自分は利用すべきか判断が難しい」「必要書類と言われても、何を用意すればいいか分からない」

ここまで読んで、このように感じた方もいらっしゃるかもしれません。特に、本店の実在性を証明する書類の準備や、ご自身の状況に合わせたメリット・デメリットの判断は、専門的な知識がないと難しい場合もあります。

もしご自身で手続きを進めて申出が認められなかったり、デメリットをよく理解しないまま進めて後で事業に支障が出たりしては、元も子もありません。

手続きに少しでも不安を感じたり、判断に迷ったりした場合は、私たち司法書士のような専門家に相談することも有効な選択肢です。専門家に依頼すれば、時間や手間を節約できるだけでなく、あなたの状況に合わせた助言を受けながら、手続きの不備を減らして進めやすくなります。安心して事業に専念するための一つの方法として、ぜひご検討ください。

代表取締役等住所非表示措置の相談窓口

よくある質問(Q&A)

最後に、この制度に関してよく寄せられる質問をQ&A形式でまとめました。

Q1. 合同会社の代表社員ですが、住所を非表示にできますか?

A. 残念ながら、できません。

本制度の対象は株式会社の代表取締役などに限定されています。合同会社、特例有限会社、一般社団法人などは対象外です。

代替策としては、自宅以外の住所(例えば、親族の事務所やバーチャルオフィスなど)を登記上の住所として利用する方法が考えられますが、それぞれ注意点があるため、安易な判断は禁物です。

Q2. 住所を非表示にした後、引っ越した場合はどうすればいいですか?

A. 住所変更登記と、改めて非表示措置の申出が必要です。

非表示措置を利用していても、代表者の住所が変わった場合は、2週間以内に住所変更登記を行う義務があります。この登記申請の際に、もう一度、非表示措置の申出書を添付しなければ、新しい住所がそのまま公開されてしまいます。これは非常に重要なポイントなので、忘れないようにしてください。

Q3. 申出の手続きに費用はかかりますか?

A. 申出自体に費用はかかりませんが、関連する費用が発生します。

住所非表示措置の申出書を法務局に提出すること自体には、手数料や登録免許税はかかりません。しかし、この申出と同時に行う登記申請(設立登記、役員変更登記、住所変更登記など)には、それぞれ所定の登録免許税が必要です。また、添付書類である住民票などを取得するための実費もかかります。司法書士に手続きを依頼した場合は、別途報酬が発生します。

まとめ

2024年10月から始まった「代表取締役等住所非表示措置」は、代表者のプライバシーを守る上で非常に有効な手段です。ストーカー被害や迷惑な営業といったリスクを減らし、事業に集中できる安心感を得られる大きなメリットがあります。

しかしその一方で、金融機関からの融資や取引先との与信審査において、不利に働く可能性もゼロではありません。

この制度を利用するかどうかは、ご自身の事業内容や将来の計画、そして何を大切にしたいかをよく考え、慎重に判断することが大切です。この記事が、あなたの正しい判断の一助となれば幸いです。

もし判断に迷ったり、手続きに不安を感じたりしたときは、一人で抱え込まずに私たち専門家にご相談ください。あなたの状況を丁寧にお伺いし、安心して事業を進めるためのお手伝いをさせていただきます。

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