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突然の連絡… 叔父・叔母の相続、まず落ち着いて状況を確認しましょう
ある日突然、役所や見知らぬ会社から手紙が届き、「亡くなった叔父(叔母)の相続人になりました」と告げられたら、誰でも驚き、混乱してしまうことでしょう。特に、長年疎遠だった場合には「なぜ自分が?」「これからどうなってしまうのか…」と、大きな不安を感じていらっしゃるのではないでしょうか。
相続を承認するのか、それとも放棄するのか。この判断には「3ヶ月」という期限がありますが、だからといって焦る必要はありません。大切なのは、慌てて行動する前に、ご自身の状況を正しく理解することです。
この記事では、あなたと同じように、突然叔父・叔母の相続人となった甥・姪の方に向けて、相続放棄の期限が「いつから」始まるのか、そして「いつまでに」「何をすべきか」を、司法書士が一つひとつ丁寧に解説していきます。読み終える頃には、きっとご自身の状況が整理され、次の一歩を落ち着いて踏み出せるはずです。
なぜ私が相続人に?甥・姪が相続する仕組み
「叔父(叔母)には子どもがいたはずなのに…」「兄弟姉妹は他にもいるのに、なぜ私に連絡が?」多くの方が、まずこの疑問に突き当たるはずです。あなたが相続人になったのには、法律で定められた相続のルールが関係しています。少し複雑に感じるかもしれませんが、ご自身の立場を理解するために、ここで基本を押さえておきましょう。

相続には優先順位がある(法定相続人)
法律では、誰が遺産を相続するのか、その優先順位が決められています。これを「法定相続人」といいます。
- 第1順位:亡くなった方の子ども(や孫)
- 第2順位:亡くなった方の親(や祖父母)
- 第3順位:亡くなった方の兄弟姉妹
相続は、この順位の高い人から権利を得ます。つまり、第1順位の人が一人でもいれば、第2順位や第3順位の人に相続権は移りません。今回の場合、叔父様・叔母様に第1順位の子どもや第2順位の親がおらず、初めて第3順位である兄弟姉妹(あなたのお父様やお母様など)に相続権が回ってきた、という状況が考えられます。
親が亡くなっているとなぜ?「代襲相続」とは
「なるほど、相続権は第3順位の兄弟姉妹にあるのか。でも、私の親はもう亡くなっているのに…」
ここでもう一つ、重要な「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」という仕組みが登場します。
これは、本来相続人となるはずだった人(この場合は、あなたのお父様やお母様)が、相続が始まる前に亡くなっていた場合に、その子どもが代わりに相続権を引き継ぐという制度です。つまり、あなたのお父様(お母様)が受け取るはずだった相続人としての立場を、あなたがそのまま引き継ぐ形になった、ということです。これが、甥・姪であるあなたが相続人になった理由です。
あなたの相続放棄の期限はいつから?起算点の3パターン
さて、ここからが本題です。相続放棄の手続きは、原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」に行わなければなりません。この3ヶ月の期間を「熟慮期間」といい、この期間のスタート地点を「起算点」と呼びます。
重要なのは、この「知った時」というのが、単に「叔父・叔母が亡くなった日」ではないということです。具体的には、以下の2つの事実を両方とも知った時点が、あなたの起算点となります。
- 叔父(叔母)が亡くなったという事実
- その結果、自分が相続人になったという事実
甥・姪の方が相続人になるケースは、この起算点がいつになるのか分かりにくいことが非常に多いです。ご自身の状況がどれに当てはまるか、確認してみましょう。
原則:「自分が相続人だと知った時」から3ヶ月
法律(民法915条1項)で定められている、熟慮期間の起算点の基本は、前述のとおり「自分が相続人になったことを知った時」です。疎遠であった叔父・叔母の相続では、亡くなった事実さえしばらく知らないケースも少なくありません。そのため、死亡日から3ヶ月が過ぎていても、慌てる必要はないのです。
ケース1:役所や債権者からの通知で初めて知った場合
甥・姪の方にとって、最も多いのがこのパターンではないでしょうか。ある日突然、金融機関や役所、債権回収会社などから督促状や照会書が届き、そこで初めて叔父・叔母が亡くなったこと、そして借金を残しており自分が相続人になっていることを知るケースです。
この場合、起算点は「その通知などにより、叔父・叔母の死亡と、自分が相続人であることを知った時」となるのが一般的です。3ヶ月のカウントは、その日からスタートします。届いた通知書は、起算日の重要な証拠となりますので、絶対に捨てずに保管しておきましょう。

ケース2:他の親族(いとこ等)からの連絡で知った場合
叔父・叔母の子ども(いとこ)など、他の親族から「父(母)が亡くなり、私(たち)は相続放棄をしました。そのため、あなたが相続人になります」といった連絡を受けるケースもあります。
この場合、起算点は「その連絡などにより、叔父・叔母の死亡と、自分が相続人であることを知った時」となるのが一般的です。具体的には、そのいとこから相続放棄をした旨の通知のあった日が起算点となります。したがって、電話などの口頭での連絡だった場合は、後々のトラブルを防ぐためにも、いつ、誰から、どのような内容の連絡があったのかを、必ずメモに残しておくようにしましょう。そして、自分が相続放棄をする際の裁判所に提出する書類にもなる為、いとこが裁判所から受け取った「相続放棄申述受理通知書の写し」も貰っておきましょう。
ケース3:先順位の相続人がいると思っていた場合
叔父・叔母に子ども(いとこ)がいることは知っていたので、当然自分は相続人ではないと思っていた。しかし、後になって、その子どもたちが全員相続放棄を済ませていたことを知った、という複雑なケースもあります。
この場合の起算点は、「先順位の相続人が相続しない結果として、自分が相続人となったことを知った時」となるのが一般的です。先順位の相続人がいることを知っているだけでは、まだ熟慮期間は始まりません。その人たちが誰も相続しなかった結果、自分に順番が回ってきたと知った日がスタートになるのです。
期限内に相続放棄を判断するための2つのステップ
ご自身の起算点がいつになるか、おおよそ見当がついたでしょうか。次に、3ヶ月という限られた時間の中で、的確に判断・行動するために必要な2つのステップをご紹介します。特に疎遠だった親族の場合、これらは同時並行で、できるだけ早く始めることが重要です
ステップ1:財産調査|プラスとマイナスの財産を把握する
相続放棄をするかどうか決めるには、まず叔父・叔母がどのような財産を残したのかを把握する必要があります。財産には、預貯金や不動産といった「プラスの財産」だけでなく、借金やローンといった「マイナスの財産」も含まれます。
特に重要なのが、マイナスの財産の調査です。心当たりのある金融機関がないか、故人の自宅に契約書や督促状などが残されていないか確認しましょう。また、信用情報機関に情報開示請求を行うことで、故人の借入状況を調べることができます。詳しい故人の借金調査の方法については、別の記事で詳しく解説しています。
ステップ2:必要書類の収集|戸籍集めは時間がかかる
相続放棄は、家庭裁判所に「相続放棄の申述」という手続きを行う必要があり、そのためには多くの書類を集めなければなりません。特に大変なのが、戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)の収集です。
甥・姪が相続放棄をする場合、単にご自身の戸籍謄本だけでは足りません。なぜ自分が相続人になったのかを証明するために、
- 亡くなった叔父・叔母の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
- 本来の相続人(あなたのお父様・お母様)の死亡が記載された戸籍謄本
- 先順位である第1順位・第2順位の相続人がいないことを証明するための戸籍謄本
など、膨大な量の戸籍が必要になるケースがほとんどです。本籍地が各地に点在していることも多く、郵送での取り寄せには数週間かかることも珍しくありません。財産調査と並行して、できるだけ早く戸籍の収集に着手することをお勧めします。
もし期限に間に合わない・過ぎてしまったら?
「財産調査が終わらない」「戸籍がなかなか集まらない」…3ヶ月という期間は、意外とあっという間に過ぎてしまいます。もし期限に間に合いそうにない場合や、すでに過ぎてしまった場合でも、まだ打つ手は残されています。
まだ間に合う!「熟慮期間の伸長(延長)」という選択肢
どうしても3ヶ月以内に相続放棄の判断ができない正当な理由がある場合には、家庭裁判所に「熟慮期間伸長の申立て」を行うことで、期間を延長してもらえる可能性があります。
例えば、以下のような理由が考えられます。
- 相続財産の種類が多く、評価や調査に時間がかかっている
- 相続人が多数おり、連絡や調整に時間がかかっている
- 海外に住んでいるため、書類の取り寄せに時間がかかる
ただし、この申立ては3ヶ月の熟慮期間が過ぎる前に行う必要があります。「間に合わないかも」と感じたら、すぐにこの手続きを検討しましょう。
期限切れでも諦めないで!3ヶ月経過後の相続放棄
原則として、熟慮期間(3ヶ月)を経過すると相続を承認した(単純承認)とみなされ、相続放棄は認められにくくなります。しかし、例外的に期限後でも相続放棄が認められるケースがあります。
それは、「相続財産が全くないと信じるに相当な理由があった」と裁判所に認めてもらえた場合です。例えば、「長年音信不通で、叔父に借金があるとは夢にも思わなかったのに、死亡から1年後に突然、債権者から多額の請求書が届いた」といったケースが考えられます。ただし、これが認められるハードルは非常に高く、専門的な主張が必要不可欠です。もし期限後の相続放棄を検討されているのであれば、すぐに専門家へ相談することをお勧めします。
甥・姪の相続放棄でよくある質問
ここでは、甥・姪という立場の方から特によくいただくご質問にお答えします。
Q. 叔父・叔母に子供(いとこ)がいる場合でも相続放棄は必要?
A. 必要になる可能性があります。
叔父様・叔母様にお子さん(あなたから見たいとこ)がいる場合、その方が第1順位の相続人です。しかし、そのいとこが相続放棄をした場合、相続権は次の順位に移ります。もし第2順位の相続人(祖父母など)もいなければ、第3順位である兄弟姉妹、そして代襲相続により甥・姪であるあなたに相続権が回ってくることになります。
叔父様・叔母様にお子さんがいるからといって、必ずしも安心はできません。いとこから「相続放棄をした」という連絡が来たときは、それがあなたの熟慮期間のスタートになる可能性があることを覚えておいてください。
Q. 相続放棄したら、自分の子供に借金は引き継がれる?
A. いいえ、引き継がれません。
ご自身が相続放棄をすると、法律上「初めから相続人ではなかった」とみなされます。そのため、あなたのお子さん(叔父・叔母から見れば大甥・大姪)に相続権がさらに移る(再代襲する)ことはありません。ご自身の代で借金の連鎖を断ち切ることができますので、ご安心ください。
Q. 相続放棄の手続き費用はどのくらいかかりますか?
A. ご自身で行う場合、実費として数千円程度かかります。
家庭裁判所に納める収入印紙(申述人1人につき800円)や、連絡用の郵便切手(裁判所により必要額が異なります)、そして戸籍謄本などの取得費用が必要です。戸籍の取得費用は、集める通数によって変動しますが、数千円から1万円程度になることもあります。
司法書士に依頼する場合は、これに加えて報酬が必要となります。当事務所の相続放棄のサポートでは、複雑な戸籍収集の支援から申述書類の作成・提出手続のサポートまで、一括して対応可能です。費用や手続きの詳細は、お気軽にお問い合わせください。
手続きが複雑で不安なときは、専門家への相談も検討しましょう
ここまで、叔父・叔母の相続人となった甥・姪の方の相続放棄について解説してきました。ご自身の状況と、これから何をすべきかが見えてきたでしょうか。
甥・姪の方が相続人となるケースは、
- 疎遠で財産状況が全く分からない
- 集めるべき戸籍謄本が非常に多く、複雑になる
- 起算点の判断が難しい
など、ご自身で手続きを進めるにはハードルが高い場合が少なくありません。特に、熟慮期間の期限が迫っている場合や、債権者から督促を受けているような状況では、精神的なご負担も大きいことでしょう。
もし少しでも手続きに不安を感じたり、ご自身で進めるのが難しいと感じたりしたときには、私たち司法書士のような専門家を頼ることも一つの大切な選択肢です。相続に関するお悩みは、一人で抱え込まず、ぜひ一度ご相談ください。
相続放棄に関するご相談や手続きのご依頼は、下記よりお気軽にお問い合わせいただけます。

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