公正証書遺言が法改正で身近に!メリットと注意点を解説

公正証書遺言とは?法改正前の長所と課題

ご自身の財産を誰にどのように残したいか、その最後の意思を形にするのが「遺言書」です。遺言書にはいくつかの種類がありますが、その中でも特に確実で信頼性が高い方法として知られているのが「公正証書遺言」です。この法改正を解説する前に、まずは公正証書遺言がどのようなものか、その長所とこれまでの課題について簡単にご説明します。

遺言書としての信頼性が高い「公正証書遺言」の長所

公正証書遺言は、法律の専門家である公証人が、遺言者ご本人の意思を確認しながら作成する公的な文書です。そのため、他の遺言方法と比べて多くの長所があります。

  • 無効になるリスクが極めて低い:公証人が内容や形式を厳格にチェックするため、法律上の不備で遺言が無効になってしまう心配がほとんどありません。
  • 紛失・改ざんの心配がない:作成された遺言書の原本は、公証役場で厳重に保管されます。そのため、ご自宅で保管していて紛失したり、誰かに書き換えられたりする危険がありません。
  • 相続手続きがスムーズ:ご自身で書く自筆証書遺言の場合、相続が始まった後に家庭裁判所で「検認」という手続きが必要ですが、公正証書遺言ではこの手続きが不要です。ご家族の負担を大きく減らすことができます。

このように、大切なご家族に確実に想いを届け、無用な争いを防ぐための優れた方法が公正証書遺言です。詳しい遺言書作成のメリットについては、こちらの記事もご参照ください。

作成時の大きなハードルだった「場所と時間の制約」

しかし、これほどメリットの多い公正証書遺言にも、作成する上で大きなハードルがありました。それは「原則として、平日の日中に公証役場へ出向かなければならない」という点です。

例えば、こんなお悩みを持つ方が多くいらっしゃいました。

  • 高齢や病気のため、外出すること自体が大きな負担になる。
  • 遠方に住んでいて、近くに公証役場がない。または、手続きに関わる子どもたちが遠くに住んでいる。
  • 平日の日中は仕事で忙しく、どうしても時間が作れない。

もちろん、公証人に出張してもらう制度もありますが、費用が高額になるなどの課題がありました。「遺言書は作りたいけれど、公証役場に行くのが難しい…」そう感じて、作成をためらっていた方も少なくなかったのではないでしょうか。今回の法改正は、まさにこうした悩みを解決するためのものなのです。

【2025年10月施行】法改正で公正証書遺言がより身近に

2025年10月1日から、公証人法と民法の一部が改正され、公正証書遺言の作成手続きが大きく変わります。一言でいえば、「デジタル化」と「オンライン化」です。これにより、これまで多くの方が感じていた物理的なハードルが取り払われ、公正証書遺言がより身近で利用しやすい制度になります。

自宅や病院から作成可能に!リモート手続きの導入

今回の法改正で最も大きな変更点は、ウェブ会議システムを利用したリモート(遠隔)での遺言作成が可能になることです。ウェブ会議システムを利用して病院から公正証書遺言を作成する様子を表現したイラスト。これにより、遺言者ご本人が公証役場へ足を運ぶ必要がなくなります。

例えば、遺言者ご本人はご自宅や入院先の病院から、証人となるお子様はそれぞれの職場やご自宅から、そして公証人は公証役場から、というように、全員が別々の場所にいても、パソコンやタブレットの画面を通じて手続きを進めることができるようになります。これまで場所や時間の制約で諦めていた方にとって、これは非常に大きなメリットと言えるでしょう。

電子データで安全に保管。電子署名にも対応

もう一つの大きな変更点は、公正証書の原本が電子データ(電磁的記録)で作成・保管されるようになることです。これまでは紙の書類として作成されていましたが、これからはデジタルデータとして管理されるため、紙の書類のように劣化したり、火災や地震などの災害で失われたりするリスクが大幅に低減されます。

また、これに伴い、遺言者や証人の署名・押印も「電子署名」で行うことが可能になります。これにより、手続き全体がデジタルで完結し、より安全で確実な遺言の作成と保管が実現します。

参考:公正証書の作成に係る一連の手続のデジタル化について

法改正のメリットを活かせる具体的なケース

では、この新しい制度は、具体的にどのような方にメリットがあるのでしょうか。読者の皆様の状況に当てはまるケースがないか、一緒に見ていきましょう。

体が不自由な方、遠方に住む家族、日中忙しい方など、法改正のメリットを活かせる様々なケースを示したイラスト。

ケース1:体が不自由で外出が難しい方

ご高齢であったり、ご病気で療養中であったりして、外出が難しい方にとって、この法改正はまさに朗報です。これまで「公証役場まで行くのはとても無理だ…」と遺言書の作成を諦めていた方でも、ご自宅や病院のベッドの上から、パソコンやタブレットを通じて公正証書遺言を作成できるようになります。

横浜市西区のえなみ司法書士事務所(代表司法書士:榎並慶太、神奈川県司法書士会所属)では、以前から「無料訪問面談」を実施し、お客様のご自宅までお伺いしてご相談に応じてまいりました。この新制度と私たちのサービスを組み合わせることで、遺言内容のご相談から実際の作成まで、ご自宅から手続きの大部分を進めることが可能になりますが、公証人の指定・通信環境等の事情により対面を要する場合もございます。大切な想いを未来へ残すお手伝いを、ぜひ私たちにお任せください。

ケース2:遠方にお住まいでお子さんや証人と集まりにくい方

「自分は横浜に住んでいるが、証人をお願いしたい長男は大阪、次男は福岡に住んでいる…」といったケースは珍しくありません。従来の方法では、遺言を作成するために全員が同じ日に同じ場所に集まる必要があり、スケジュール調整だけでも大変な手間でした。

しかし、リモート手続きが導入されることで、この問題は解決します。ご本人、お子様、公証人がそれぞれの場所からウェブ会議システムに参加すればよいため、物理的に集まる必要がなくなります。これにより、日程調整の負担が劇的に減り、遠方にお住まいのご家族にもスムーズに協力してもらえるようになります。

ケース3:日中忙しく、平日に時間が取れない方

現役で働いていらっしゃる方にとって、平日の日中に時間を確保して公証役場に行くのは簡単ではありません。今回の法改正でオンライン化が進むことで、公証人との事前の打ち合わせなどもメールやウェブ会議で効率的に行えるようになり、手続きにかかる全体の時間が短縮されることが期待されます。

さらに、えなみ司法書士事務所(所在地:横浜市西区北幸1-11-1 水信ビル7階、代表司法書士:榎並慶太、神奈川県司法書士会所属)では、平日・土日祝日を問わず21時までご相談に対応しております(要予約、担当者の都合により変更となる場合があります)。お仕事が終わった後の夜間や、休日のリラックスした時間にご相談いただき、私たち司法書士が公証人とのやり取りや書類準備を代行することで、お忙しい方でもご自身のペースでスムーズに遺言書作成を進めることができます。

新制度を利用する際の注意点と専門家への相談

非常に便利になる新制度ですが、利用するにあたっていくつか知っておくべき注意点もあります。しかし、ご安心ください。これらの点は、専門家である司法書士にご相談いただければ、しっかりとサポートいたします。

パソコンやネット環境の準備は必要?

リモートで手続きを行うためには、当然ながらパソコンやタブレット、スマートフォンといった機器と、安定したインターネット環境が必要になります。また、ウェブ会議システムを使うためのカメラやマイクも必要です。

「デジタル機器は苦手で…」と不安に思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、特別に難しい操作が求められるわけではありません。普段、ご家族とビデオ通話をするような感覚で臨んでいただければ大丈夫です。もし設定にご不安があれば、私たちがサポートできることもありますので、遠慮なくお申し付けください。

公正証書遺言の作成に必要な証人2名を表すイラスト。信頼できる専門家がサポートするイメージ。

証人2名の立会いは変わらず必要です

手続きがデジタル化されても、公正証書遺言の重要な要件である「証人2名以上の立会い」は、これまでと変わりなく必要です。この証人は誰でもなれるわけではなく、将来財産を受け取る予定の方(推定相続人)やその配偶者などは証人になることができません(証人欠格者)。

「証人を頼めるような親戚や知人がいない…」とお困りの方もいらっしゃるでしょう。そのような場合でもご安心ください。証人の手配については、公証人の運用や法令に従い中立性を確認したうえで支援いたします。司法書士が証人を務める場合には、中立性・適格性を個別に確認のうえご案内しますので、適切な証人探しに悩む必要はありません。

手続きの不安は司法書士にご相談ください

法改正によって手続きの場所的なハードルは下がりますが、遺言書の最も大切な部分である「内容」をどうするか、という点は変わりません。ご自身の想いを法的に有効な形で、かつ、ご家族の間で争いが起きないように書き記すには、専門的な知識と経験が不可欠です。

また、遺言書を作成するために必要な戸籍謄本や不動産の登記事項証明書といった書類の収集、公証人との事前の打ち合わせなど、専門家でなければ煩雑に感じる作業も多くあります。

私たち司法書士にご依頼いただければ、お客様のお気持ちを丁寧にお伺いし、最適な遺言内容をご提案することから、面倒な書類収集、公証人との打ち合わせの代行などをワンストップでサポートいたします。証人立会いについては、法令及び公証人の運用に従い対応可能な範囲で支援します。詳細は個別にご相談ください。法改正で便利になったこの機会に、ぜひ専門家の力を活用してみませんか。まずは無料相談でお気軽にお問い合わせください

まとめ:法改正を機に、公正証書遺言の作成を検討しましょう

今回は、2025年10月から始まる公正証書遺言の法改正について解説しました。ポイントをまとめます。

  • ウェブ会議システムを使い、自宅や病院からリモートで作成できるようになります。
  • 原本が電子データで保管され、より安全・確実になります。
  • 外出が難しい方、関係者が遠方に住んでいる方、日中お忙しい方などに特に大きなメリットがあります。

遺言書は、残されたご家族への最後のラブレターとも言われます。大切なご家族が相続で争うことなく、円満に暮らしていけるように、そしてご自身の感謝の気持ちを伝えるために、とても大切なものです。

今回の法改正により、公正証書遺言の作成は、これまで考えられなかったほど身近で便利なものになりました。「自分には関係ない」「まだ早い」と思わずに、この機会にぜひ一度、遺言書の作成を検討してみてはいかがでしょうか。えなみ司法書士事務所は、いつでもあなたの「安心」に寄り添います。

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