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相続した不動産に謎の登記?まずはご自身の状況を確認しましょう
ご両親から大切な不動産を相続した際、法務局で取得した登記簿謄本(登記事項証明書)を見て、戸惑われた方もいらっしゃるかもしれません。
「権利部乙区」や「権利部甲区」という欄に、見慣れない人の名前や、「抵当権設定」「所有権移転請求権仮登記」といった文字。日付を見ると、大正や昭和初期など、何十年も前のもので、「これは一体何なのだろう?」「このまま相続して大丈夫なのだろうか?」と不安に感じてしまうのは、ごく自然なことです。
でも、ご安心ください。そのような古い登記が残っていても、解決する方法はきちんと用意されています。
私たち、えなみ司法書士事務所でも、実家の不動産の相続登記をお手伝いする中で、大正・昭和時代に設定された古い抵当権や仮登記がそのままになっているケースに対応した経験がございます。これらは、いわば「消し忘れられた登記」のようなものです。
この記事では、相続した不動産に残された古い抵当権や仮登記とは何なのか、放置するとどのようなリスクがあるのか、そして、具体的にどうすればきれいに抹消できるのかを、専門家である司法書士が分かりやすく解説していきます。読み終える頃には、ご自身の状況を整理し、次の一歩をどう踏み出せば良いかが明確になっているはずです。
放置は危険!古い抵当権・仮登記が残る2つのリスク
「何十年も前の登記なのだから、そのままでも問題ないのでは?」と思われるかもしれません。しかし、これらの古い登記を放置することには、無視できない大きなリスクが潜んでいます。主なリスクは以下の2つです。
リスク1:不動産の売却や担保としての活用ができない
最大のリスクは、その不動産を自由に処分できなくなることです。抵当権や仮登記が残ったままの不動産は、権利関係が不安定な状態と見なされます。
そのため、いざその不動産を売却しようとしても、買主様は「この登記が抹消されない限り、代金は支払えません」と言うでしょう。また、お子様の教育資金やご自身のリフォームのために、その不動産を担保に金融機関から融資(ローン)を受けようとしても、審査に通ることは極めて困難です。
つまり、登記簿上はご自身の所有物であっても、実質的には資産価値が大きく損なわれてしまう可能性があるのです。
リスク2:次の相続で子や孫に大きな負担を残してしまう
もう一つの深刻なリスクは、問題を先送りにしてしまうことです。もし、ご自身がこの問題に対処しないまま次の相続が発生した場合、その負担はあなたのお子様やお孫様の世代に引き継がれてしまいます。
時間が経てば経つほど、登記に関係する人々は亡くなり、その相続人がネズミ算式に増えていきます。ご自身の代であれば数人の協力で済んだ手続きが、次の世代では数十人の同意を取り付けなければならない、という事態にもなりかねません。
そうなると、手続きはさらに複雑化し、解決にかかる時間も費用も膨れ上がってしまいます。ご自身の代でこの問題を解決しておくことは、将来の世代に対する大切な責任とも言えるでしょう。
【ケース1】古い抵当権(休眠担保権)の抹消手続き
まず、古い抵当権が残っている場合の解決策を見ていきましょう。何十年も前に設定された抵当権で、実質的に効力を失っているものを一般に「休眠担保権」と呼びます。
これは、昔の金融機関(無尽会社など)や個人からお金を借りた際の担保として設定されたものの、完済後も抹消手続きが忘れられていた、というケースがほとんどです。
抵当権者が行方不明なら「供託」で抹消できる
休眠担保権を抹消しようにも、抵当権者である会社は既になく、個人の方も行方が分からない、という場合がほとんどです。このようなケースのために、法律は「供託(きょうたく)」という特別な手続きを用意しています。
供託とは、返済すべきお金(元本、利息、損害金)を、抵当権者の代わりに法務局(供託所)に預けることで、債務が消滅したとみなし、不動産の所有者が単独で抵当権の抹消登記を申請できる制度です。
この制度を利用するには、以下の条件を満たす必要があります。
- 債権の弁済期(返済期限)から20年が経過していること
- 抵当権者(債権者)の行方が知れないこと
手続きの大まかな流れは以下のようになります。
- 抵当権者の調査: まずは登記簿上の住所や会社名を元に、抵当権者の現在の所在や法人の状況を調査します。行方不明であることを証明する資料(閉鎖登記簿謄本や住民票の除票など)を収集します。
- 供託金の計算・納付: 登記簿に記載された元本・利息・遅延損害金を法律のルールに従って計算し、法務局(供託所)に金銭を預け、「供託書正本」を受け取ります。
- 法務局で抹消登記: 収集した書類と供託書正本を添付して、不動産の所在地を管轄する法務局に抵当権抹消登記を申請します。
この一連の手続きは法的な判断や複雑な書類作成を伴うため、専門家である司法書士にご相談いただくのがスムーズです。
参考:休眠抵当権抹消のための供託:福島地方法務局 – 法務省
抵当権者の相続人が判明している場合の手続き
調査の結果、抵当権者が亡くなっており、その相続人が判明した、というケースもあります。この場合、手続きは供託とは異なります。
原則として、その相続人全員に協力を依頼し、共同で抵当権抹消登記を申請することになります。そのためには、まず戸籍を収集して相続人全員を確定させる必要があります。
しかし、相続人の中には協力的でない方がいたり、連絡がつかなかったりすることもあります。話し合いで解決できない場合は、裁判(抵当権抹消請求訴訟)を起こして、判決を得て抹消登記を行うという方法もあります。いずれにせよ、関係者が増えるほど手続きの難易度は高くなります。
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【ケース2】古い仮登記の抹消手続き
次に、抵当権と並んでよく見られる「仮登記」の抹消についてです。仮登記には様々な種類がありますが、古いもので多いのは「売買予約」や「代物弁済予約」を原因とするものです。これも、契約がなくなったにもかかわらず、抹消されずに残ってしまったケースがほとんどです。
原則は権利者との共同申請。しかし、多くは死亡・行方不明
仮登記の抹消も、抵当権と同様に、登記上の権利者と不動産の所有者が共同で申請するのが原則です。しかし、何十年も前の仮登記の場合、権利者の方が亡くなっていたり、行方不明だったりすることが大半です。
「相手と連絡が取れないなら、もう抹消は無理なのでは…」と諦めてしまう必要はありません。このような場合にも、法律に則った解決策があります。
権利者死亡時は、その相続人を探し出して手続きを進める
仮登記の権利者が亡くなっている場合、その権利は相続人に引き継がれています。そのため、抹消手続きを進めるには、まず権利者の相続人全員を探し出す必要があります。
これは、亡くなった権利者の出生から死亡までの戸籍謄本や、その親、子、場合によっては兄弟姉妹の戸籍謄本まで遡って調査するという、非常に根気のいる作業です。
司法書士は職務上、これらの戸籍を取得し、相続関係を正確に把握することができます。相続人が確定したら、その方々全員に連絡を取り、仮登記の抹消に協力してくれるよう依頼します。
もし相続人の中に非協力的な方がいる場合や、相続人が多すぎて協力が得られない場合は、抵当権のケースと同様に裁判手続きを検討することになります。仮登記の抹消は、抵当権の供託手続きのように所有者一人で進められる制度がないため、より一層、専門的な対応が求められます。

手続きは複雑。専門家である司法書士への相談が安心です
ここまで見てきたように、古い抵当権や仮登記の抹消手続きは、権利関係者の調査、法的な書類の作成、法務局とのやり取りなど、専門的な知識と多くの時間を要します。特に、相続が絡むと手続きは格段に複雑になります。
ご自身で全てを抱え込まず、私たち司法書士のような専門家にご相談いただくことで、時間的・精神的なご負担を大幅に軽減できます。当事務所では、相続登記についてのご相談も幅広く承っておりますので、ご安心ください。
当事務所は、お客様の「困った」に寄り添い、最善の解決策をご提案いたします。まずは無料相談から。お気軽にお問い合わせください。
司法書士に依頼すべきケースとは?
特に、以下のような状況に当てはまる場合は、お早めに司法書士へご相談いただくことを強くお勧めします。
- 登記簿に記載されている抵当権者や仮登記権利者の名前や住所に心当たりがない
- 権利者がすでに亡くなっており、相続人が誰で何人いるのか全く分からない
- 権利関係者が多数にのぼる可能性がある
- 平日は仕事で忙しく、役所や法務局を回ったり、書類を集めたりする時間がない
- 法的な手続きや書類の作成に不安がある
一つでも当てはまるようでしたら、ぜひ一度、専門家の意見を聞いてみてください。
手続きにかかる費用と期間の目安
手続きにかかる費用は、大きく分けて「実費」と「司法書士報酬」の2つです。
- 実費:登録免許税(不動産1個につき1,000円)、戸籍謄本などの取得費用、供託金など、手続きに必ずかかる費用です。
- 司法書士報酬:供託による抵当権の抹消につき88,000円(税込み)~。仮登記の相続登記及び抹消登記につき88,000円(税込み)~。権利関係者の調査、書類作成、法務局への供託手続き(供託金の納付を含む)及び抵当権抹消登記の申請代理などに対する専門家への報酬です。
期間については、事案の複雑さによって大きく異なります。関係者が少なくスムーズに進めば1〜2ヶ月程度で完了することもありますが、相続人調査や裁判手続きが必要になると、半年から1年以上かかる場合もあります。
えなみ司法書士事務所では、ご依頼いただく前に詳細なお見積もりをご提示し、分かりやすい料金体系を心がけております。費用面でご不安な方も、まずはお気軽にご相談ください。
まとめ|不安な相続手続きは、横浜・川崎の専門家にお任せください
相続した不動産に眠っていた古い抵当権や仮登記。一見すると複雑で厄介な問題に思えますが、この記事でご紹介したように、解決に向けた手続をご提案します。
重要なのは、放置せずに、ご自身の代で問題をきちんと整理しておくことです。そうすることで、大切な資産を将来にわたって守り、お子様やお孫様に負担を残さずに済みます。
えなみ司法書士事務所は、横浜市・川崎市を中心に、地域にお住まいの皆様の「いつでも相談できる」パートナーでありたいと考えております。お客様のご自宅などへ直接お伺いする「無料訪問面談」や、平日はもちろん土日祝日も21時まで対応するなど、お客様のご負担を少しでも軽くするための体制を整えています。
一人で悩まず、まずは私たち専門家にお話をお聞かせください。一緒に最善の解決策を見つけていきましょう。
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代表司法書士 榎並 慶太
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