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海外の外国人親族へ日本の不動産は遺贈できる?
「海外に住んでいる、外国籍の甥に、私が所有している日本のマンションを遺したい。そもそも、そんなことは可能なのだろうか?」
このようなご相談をいただくことが増えてきました。大切な財産を、国境を越えて、血のつながりのある大切な方へ届けたい。そのお気持ちは、とても自然なことです。
まず、ご安心ください。日本の不動産を、海外にお住まいの外国人親族へ遺贈することは、法律上まったく問題なく可能です。財産を誰に遺すかは、所有者の自由な意思に委ねられており、相手の国籍や居住地によって制限されることはありません。
ただし、手続きの面では、国内に住む親族への相続とは異なる、いくつかの特別な配慮が必要になるのも事実です。例えば、相手の方が日本の「印鑑証明書」や「住民票」を持っていないため、それに代わる書類として、現地公証人による署名認証や、本国・居住国の官公署が発行する住所証明書、または宣誓供述書などを準備してもらう必要があります。言葉の壁や物理的な距離が、手続きを少し複雑にすることもあるでしょう。
しかし、心配しすぎる必要はありません。一つひとつの手順を正しく理解し、計画的に準備を進めれば、あなたの大切な想いを実現できる可能性を高められます。この記事では、国際的な不動産遺贈の専門家である司法書士が、そのための具体的な手順や注意点を、分かりやすく解説していきます。複雑な手続きも、専門家と一緒なら乗り越えられます。まずは全体像を掴んでいきましょう。
なお、遺贈の前提となる遺言書の作成全般については、こちらの記事で体系的に解説していますので、合わせてご覧ください。
不動産を遺贈するための全手順【3ステップで解説】
海外にお住まいの外国人親族へ不動産を遺贈する手続きは、大きく分けて以下の3つのステップで進みます。まずはこの全体像を把握することで、ご自身が今どの段階にいて、次に何をすべきかが明確になります。
- ステップ1:遺言書を作成する(生前の準備)
- ステップ2:遺贈を実行し不動産の名義変更(登記)を行う(亡くなった後の手続き)
- ステップ3:関連する税金を申告・納税する
一見すると複雑に思えるかもしれませんが、各ステップでやるべきことは明確です。特に重要なのは、生前の準備である「ステップ1」です。ここでしっかりと準備をしておくことが、後の手続きをスムーズに進めるための鍵となります。それでは、各ステップを詳しく見ていきましょう。
ステップ1:遺言書を作成する(生前の準備)
海外の親族へ不動産を遺贈する場合、その意思を明確にするために遺言書の作成が必要です。
この遺言書の内容が、すべての手続きの土台となります。
遺言書を作成する際は、特に以下の2つのポイントを正確に記載することが極めて重要です。
- 不動産の情報:対象となる不動産を特定するため、登記事項証明書(登記簿謄本)に書かれている通り、一字一句正確に記載してください。「横浜市西区のマンション」といった曖昧な書き方では、法務局で手続きができません。
- 親族(受遺者)の情報:財産を受け取る親族の情報を、公的な書類に基づいて正確に記載します。氏名(アルファベットのスペルも正確に)、海外の住所、生年月日、国籍などを詳しく書き記します。
そして、国際的な遺贈を成功させるための最も重要なポイントが「遺言執行者」を指定しておくことです。
遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な手続き(不動産の名義変更や預貯金の解約など)を行う権限を持つ人のことです。特に、受遺者が海外に住んでいる場合、日本の複雑な手続きを自分で行うのは非常に困難です。時差や言語の壁もあります。
そこで、日本の法律や手続きに精通した司法書士などの専門家を遺言執行者に指定しておくことで、あなたが亡くなった後、その専門家が責任を持って、海外の親族への不動産の名義変更手続きをスムーズに進めてくれます。これは、あなたの想いに沿った手続きを進めやすくするために、手続きを担う人をあらかじめ決めておく有効な手段です。
ステップ2:遺贈を実行し不動産の名義変更(登記)を行う
あなたが亡くなられた後、いよいよ遺言の内容を実現するステップに移ります。遺言執行者が中心となり、不動産の名義をあなたから海外の親族へ変更する「所有権移転登記」を法務局に申請します。

この登記手続きにおいて、受遺者である海外の親族に用意してもらう必要があるのが、以下の2つの特別な書類です。
- 署名を証明する書類:現地公証人による署名認証など、日本の「印鑑証明書」に代わる書類です。
- 住所を証明する書類:本国・居住国の官公署が作成した住所証明書、または公証人が認証した宣誓供述書など、日本の「住民票」に代わる書類です。
なぜなら、不動産登記の際には、新しい所有者となる人の実在と住所を公的に証明する必要があるからです。日本にいれば印鑑証明書と住民票で足りますが、海外在住の外国人の方にはそれがありません。そのため、外国籍の受遺者については、署名については現地公証人による認証など、住所については本国・居住国の官公署が作成した住所証明書や、公証人が認証した宣誓供述書などを準備する必要があります。
遺言執行者は、これらの書類を海外の親族から郵送してもらい、他の必要書類と合わせて法務局に提出することで、不動産の名義変更手続きを完了させます。国をまたぐ書類のやり取りは時間もかかり、不備があればさらに遅延するため、専門家が間に入る価値は非常に大きいと言えるでしょう。
ステップ3:関連する税金を申告・納税する
不動産の遺贈が完了すると、税金の問題が発生します。主に以下の3つの税金が関係してきますので、誰が、いつまでに納める必要があるのかを理解しておくことが大切です。
- 不動産取得税:相続人以外への特定遺贈や死因贈与などにより不動産を取得した場合に課されることがあります。一方、包括遺贈や相続人への特定遺贈は非課税となります。
- 登録免許税:不動産の名義変更(登記)をする際に、法務局に納める税金です。通常は登記を申請する際に、遺言執行者が預かった費用から納付します。
- 相続税:遺贈された財産の価額が基礎控除額を超える場合に課される税金です。たとえ受遺者が外国人・海外在住であっても、日本国内にある不動産を取得した場合は、日本の相続税の課税対象となります。相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に、受遺者が申告・納税する必要があります。
これらの納税手続きも、海外に住む親族が一人で行うのは大変です。税金の計算や申告書の作成は専門的な知識を要します。この点も、遺言執行者や、必要に応じて選任する納税管理人がサポートすることで、スムーズな納税が可能になります。財産を渡すだけでなく、その後の負担まで考慮して準備を進めることが、本当の意味での思いやりと言えるかもしれませんね。遺贈と税金の関係については、生前贈与と比較した記事でも詳しく解説しています。
「遺贈」と「死因贈与」どちらを選ぶべき?ケース別比較
不動産を渡す方法として、「遺贈」とよく似た「死因贈与」という制度があります。どちらも「自分が亡くなったことを原因として財産を渡す」という点は同じですが、その性質は大きく異なります。あなたの状況や想いに合わせて、最適な方法を選ぶことが重要です。
ここでは、「海外の外国人親族へ」という視点に特化して、両者の違いを比較してみましょう。

| 比較項目 | 遺贈 | 死因贈与 |
|---|---|---|
| 方法 | 遺言による一方的な意思表示 | 贈与者と受贈者の契約(合意) |
| 受遺者/受贈者の関与 | 生前の関与は不要 | 生前に契約内容への同意が必要 |
| 不動産取得税 | 課税される(相続人以外への特定遺贈の場合) | 課税される |
| 登録免許税 | 固定資産税評価額の2.0%(相続人以外) | 固定資産税評価額の2.0% |
| 撤回の自由度 | 原則としていつでも自由に撤回可能 | 撤回できる場合がありますが、負担付死因贈与で負担が履行されている場合などは制限されることがあります |
この比較から、どちらを選ぶべきかの判断基準が見えてきます。
「遺贈」が適しているケース
相手に負担をかけず、自分の想いとして一方的に財産を遺したい場合に適しています。例えば、「サプライズのような形で感謝を伝えたい」「相手に契約などの手続きで気を使わせたくない」といったお考えであれば、遺贈が良いでしょう。また、将来的に気持ちが変わる可能性も考えて、柔軟性を残しておきたい場合にも向いています。
「死因贈与」が適しているケース
生前のうちに、相手と「この不動産をあなたに遺します」という約束を交わし、確実にその意思を共有しておきたい場合に最適です。相手の同意を得ることで、より確実性が高まります。また、口頭でも契約は成立しますが、後のトラブルを防ぐためにも、必ず契約書(できれば公正証書)を作成しておくべきです。不動産を渡す代わりに、何らかの負担(例えば、ペットの世話など)を相手に求める「負担付死因贈与」という形も可能です。
このように、どちらが良い・悪いということではなく、あなたの想いや親族との関係性によって最適な方法は異なります。生前のうちに財産を渡す親族間売買や生前贈与も含め、どの方法がご自身のケースに合っているか、一度専門家にご相談いただくことをお勧めします。
海外の親族に準備してもらう必要書類と伝え方ガイド
手続きをスムーズに進める上で、海外に住む親族との連携は非常に重要です。特に、必要書類を正確に、そしてタイミング良く取得してもらうことが成功の鍵を握ります。ここでは、具体的にどの書類が必要で、どのように依頼すれば良いのかを解説します。
より詳しい手順については、海外在住の相続人がいる場合の相続登記の記事もご参照ください。
①署名証明書(サイン証明書):印鑑証明書の代わり
外国籍者については、現地公証人による署名認証などが、日本の「印鑑証明書」に代わる書類として用いられます。不動産の名義変更に必要な委任状などに添付します。
- 役割:本人の意思に基づいた署名であることを公的に証明する。
- 取得場所:居住国の公証人役場など。
- 取得方法:本人がパスポートなどの身分証明書を持参し、領事の目の前で書類に署名する。
- 伝え方のポイント:「日本の不動産の名義変更をするために、あなたのサインが本人のものであることを証明する書類が必要です。お住まいの国の公証人役場などで、署名認証を受けてください。」
この手続きは、本人が直接出向く必要があるため、事前に親族のスケジュールを確認し、余裕をもって依頼することが大切です。
参照:法務局|外国に居住しているため印鑑証明書を取得することができない場合の不動産登記の添付書面について
②在留証明書:住民票の代わり
外国籍者については、本国・居住国の官公署が作成した住所証明書や、公証人が認証した宣誓供述書などが、日本の「住民票」に代わる住所証明情報として用いられます。新しい不動産の所有者として登記される方の住所を証明するために不可欠です。

- 役割:海外における現住所を公的に証明する。
- 取得場所:本国・居住国の官公署、または居住国の公証人役場など。
- 取得方法:本人がパスポートや現地の運転免許証、公共料金の請求書など、住所と氏名が確認できる書類を持参して申請する。
- 伝え方のポイント:「名義変更後の新しい登記簿に、あなたの現在の住所を正確に登録する必要があります。その住所を証明するために、本国・居住国の官公署が発行する住所証明書、または公証人が認証した宣誓供述書などを準備してください。」
令和8年4月1日以降の手続では、外国籍者について国籍等を証する情報の提供が必要となる場面があるため、氏名・住所・国籍等を確認できる資料を早めに整理しておくことが大切です。
参照:外務省 海外安全ホームページ|在留証明のオンライン申請(電子申請)の開始
専門家が解説!国際的な不動産遺贈で注意すべき3つのリスク
海外の親族への不動産遺贈は、国内の手続きにはない特有のリスクが伴います。事前にこれらのリスクを理解し、対策を講じておくことが、トラブルを未然に防ぎ、あなたの想いをスムーズに実現するために不可欠です。
- コミュニケーション不足による手続きの遅延
物理的な距離や時差、言語の壁は、想像以上に手続きの障壁となります。必要書類の依頼や内容確認に時間がかかり、些細な認識の違いから手続きが停滞してしまうケースは少なくありません。メールや電話だけでは、複雑な法的手続きのニュアンスを正確に伝えるのが難しい場面もあります。
【対策】遺言執行者を指定し、コミュニケーションの窓口を一本化することが極めて有効です。専門家が間に入ることで、必要な情報を整理し、正確に、かつ適切なタイミングで親族に伝えることができます。 - 書類の不備や国際郵便のトラブル
海外で取得した署名証明書や在留証明書に不備があった場合、再取得のために再び大使館へ足を運んでもらう必要があり、多大な時間と手間がかかります。また、重要な原本を国際郵便でやり取りするため、紛失や遅延のリスクもゼロではありません。
【対策】事前に専門家が必要書類の様式や記載内容を細かくチェックし、親族に具体的な指示を出すことで、不備のリスクを最小限に抑えられます。追跡可能な配送サービスを利用することも重要です。 - 他の相続人とのトラブル(遺留分)
もしあなたに配偶者やお子さんなどの法定相続人がいる場合、特定の親族だけに不動産を遺贈する内容の遺言は、他の相続人の「遺留分」を侵害する可能性があります。遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に保障された最低限の相続分のことです。他の相続人から遺留分侵害額請求をされ、不動産を受け取った親族が金銭の支払いを求められるといったトラブルに発展するケースもあります。
【対策】遺言書を作成する段階で、他の相続人の遺留分にも配慮した財産配分を検討することが重要です。専門家であれば、全財産を評価した上で、将来の紛争リスクを抑えるための遺言内容を提案できます。
手続きが複雑で不安な方は、専門家への相談をご検討ください
ここまでご覧いただいたように、海外にお住まいの外国人親族へ不動産を遺贈する手続きは、法律、税務、登記が複雑に絡み合い、ご自身だけで完遂するには多くの時間と労力、そして専門的な知識が求められます。
特に、国をまたぐ手続きでは、予期せぬトラブルが発生しがちです。書類の不備で何度も海外の親族に手間をかけさせてしまったり、コミュニケーションの行き違いで関係が気まずくなってしまったり…そんな事態は避けたいものですよね。
私たち、えなみ司法書士事務所は、国際的な相続・遺贈に伴う登記手続きや遺言書作成のサポートに対応しています。税務など他士業の専門領域については、必要に応じて連携しながら、手続き全体が円滑に進むようサポートいたします。
大切なご親族へ、あなたの想いを込めた財産を適切に承継できるように。当事務所が、必要な手続きの整理と関係者間の連絡をサポートします。ご相談は、ご自宅などご指定の場所まで無料でお伺いすることも可能です。えなみ司法書士事務所の所在地は横浜駅西口から徒歩5分とアクセスも便利です。
まずはお気軽な気持ちで、あなたの想いをお聞かせください。初回のご相談は無料です。

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