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離婚後の新生活へ、まず知っておきたい財産分与の基本
離婚という大きな決断をされ、これからの生活に向けて様々な手続きを進めていらっしゃる最中かと思います。期待と同時に、多くの不安を抱えていらっしゃるかもしれません。特に「財産分与」と聞くと、なんだか難しくて大変そうだと感じてしまう方も少なくないでしょう。
しかし、財産分与は、お二人がこれまで共に歩んできた証をきちんと整理し、それぞれが新しい未来へ安心して踏み出すための、とても大切な手続きです。この記事では、離婚に伴う財産分与の基本的な知識から、具体的な手続きの流れ、費用や注意点まで、一つひとつ丁寧に解説していきます。あなたの不安を少しでも和らげ、次の一歩を踏み出すための道しるべとなれば幸いです。

財産分与とは?夫婦で築いた財産を公平に分ける手続き
財産分与とは、法律(民法768条)で定められた権利で、夫婦が婚姻中に協力して築き上げた財産を、離婚の際にそれぞれの貢献度に応じて公平に分け合うことをいいます。
よく「慰謝料」と混同されがちですが、財産分与は離婚の原因を作ったかどうかに関わらず、どちらからでも請求できる点が大きな違いです。たとえご自身の名義ではない財産であっても、夫婦で協力して得たものであれば分与の対象となります。
私たち、えなみ司法書士事務所では、財産分与後の法的手続(例:不動産の名義変更登記など)について業務として対応しております。具体的な手続き内容や費用は個別にご説明します。
いつまでに?財産分与の請求には「離婚後2年」の期限あり
財産分与でまず覚えておきたいのが、請求できる期間に限りがあるということです。具体的には、離婚が成立した日から2年以内に請求しなければ、その権利がなくなってしまう可能性があります(これを法律上「除斥期間」といいます)。(注)現行では離婚成立から2年が除斥期間とされていますが、民法改正により一部の除斥期間が5年へ延長されることが決まっており、施行期日は法改正の経過規定を確認してください。最新の施行状況は法務省・官報等の公的情報で必ずご確認ください。
「離婚だけでも大変なのに、財産のことまで考える余裕がない…」とお感じになるかもしれませんが、大切な権利を失わないためにも、先延ばしにするのは避けたいところです。だからこそ、この記事を読んでいただいている今のうちに正しい知識を身につけ、計画的に手続きを進めていくことがとても大切になります。
【ステップ1】何が対象?財産分与の対象をリストアップする
財産分与を進めるにあたり、最初のステップは「何を分けるのか」を明確にすることです。夫婦の財産は、分与の対象となる「共有財産」と、対象とならない「特有財産」の2つに分けられます。ご自身の状況に当てはめながら、どのような財産があるかリストアップしてみましょう。
分けるべき「共有財産」とは?名義は関係ありません
共有財産とは、婚姻期間中に夫婦が協力して得た財産のことです。ここでの「協力」には、会社員として外で働くことだけでなく、家事や育児といった家庭を支える貢献ももちろん含まれます。
したがって、財産の名義が夫または妻のどちらか一方になっていても、それが婚姻中に得たものであれば共有財産とみなされるのが原則です。例えば、以下のようなものが挙げられます。
- 預貯金:夫婦それぞれや子どもの名義の口座でも、原資が婚姻中の収入であれば対象です。
- 不動産:夫婦で購入した家やマンション、土地など。
- 自動車:夫婦のどちらかの名義で購入した車。
- 生命保険など:婚姻中に支払った保険料に対応する解約返戻金。
- 有価証券:株式、投資信託など。
- 退職金・年金:将来受け取る退職金や年金も、婚姻期間に対応する部分は分与の対象となり得ます。
専業主婦(主夫)の方も、家庭を支えるという形で財産の形成に貢献しているため、もちろん財産分与を請求する権利があります。
分ける必要のない「特有財産」とは?
一方で、財産分与の対象にならないのが「特有財産」です。これは、夫婦の一方が婚姻前から所有していた財産や、婚姻中であっても親からの相続・贈与によって得た財産を指します。
- 結婚前から持っていた預貯金
- 親から相続した不動産や株式
- 親から個人的に贈与された金銭
ただし、注意点もあります。例えば、結婚前から持っていた預貯金口座に、婚姻後の給与などが振り込まれ、生活費として使われるなどして混ざってしまうと、どこまでが特有財産なのか区別が難しくなるケースがあります。このような場合は判断が複雑になるため、一度専門家にご相談いただくことをお勧めします。
【ステップ2】どう進める?財産分与の手続き3つの流れ
分けるべき財産がリストアップできたら、次はいよいよ具体的な手続きに進みます。財産分与は、まず夫婦間の話し合いから始まり、それが難しい場合には法的な手続きへと移行します。ここでは、その3つのステップを順番に見ていきましょう。

①夫婦での話し合い(協議)と合意内容の書面化
財産分与の最も基本となる進め方は、夫婦間での話し合い(協議)です。お互いが納得できる形で、誰がどの財産をどれだけ取得するのかを決めていきます。
そして、ここで非常に大切なのが、合意した内容を必ず書面に残すことです。口約束だけでは、後になって「言った」「言わない」といったトラブルに発展しかねません。この合意書を「離婚協議書」といいます。
さらに、この離婚協議書を公正証書(特に「強制執行認諾文言」を付したもの)にしておくと、債務者が支払いを怠った際に裁判を経ずに強制執行手続に移行できる場合があります。公正証書の記載内容によって効力が異なるため、公証人や専門家と具体的に確認してください。
②話し合いがまとまらない場合は「財産分与請求調停」
夫婦間での話し合いではどうしても意見が合わない、あるいは相手が話し合いに応じてくれないといった場合には、家庭裁判所に「財産分与請求調停」を申し立てることができます。
調停では、裁判官と調停委員(民間の有識者)が中立な立場で間に入り、双方の意見を聞きながら、解決策を探る手助けをしてくれます。第三者が関わることで、感情的にならずに冷静な話し合いが進められるというメリットがあります。
参考:財産分与請求調停
③調停でも不成立なら「審判」へ
調停でも話し合いがまとまらず、不成立となった場合は、自動的に「審判」という手続きに移行します。
審判では、調停のように話し合いで合意を目指すのではなく、裁判官が双方から提出された資料や主張など、一切の事情を考慮して、財産の分け方を法的に決定します。この審判の内容には、判決と同じ効力があります。
【ステップ3】不動産の財産分与|司法書士による名義変更登記
財産分与の中でも、特に手続きが複雑になりがちなのが、ご自宅の土地や建物といった「不動産」です。ここでは、財産分与の合意が成立した後の、不動産の名義変更(所有権移転登記)について、司法書士の専門分野として詳しく解説していきます。
なぜ登記が必要?名義変更をしないと起こる将来のリスク
「話し合いで家をもらうと決まったのだから、それで終わりじゃないの?」と思われるかもしれませんが、それは大きな間違いです。口約束や離婚協議書だけでは、その不動産が本当に自分のものになったと第三者(他の誰か)に対して主張することはできません。これを法的に確定させる手続きが「登記」です。
もし名義変更をしないまま放置すると、以下のような深刻なリスクが生じる可能性があります。
- 不動産を売却したり、担保に入れて融資を受けたりできない。
- 相手方(元の名義人)が亡くなった場合、その相続人との間で所有権を巡るトラブルになる。
- 相手方が借金をし、その不動産が差し押さえられてしまう可能性がある。
こうした将来のトラブルを防ぐためにも、財産分与で不動産を取得した場合は、速やかに名義変更の登記手続きを行うことが不可欠です。
登記手続きの流れと必要書類
不動産の名義変更登記は、一般的に以下の流れで進めます。
- 必要書類の収集:法務局や市役所などで、登記に必要な書類を集めます。
- 登記申請書の作成:法律のルールに従って、登記申請書を作成します。
- 法務局への申請:不動産の所在地を管轄する法務局に、書類一式を提出します。
- 登記完了:法務局の処理状況や書類の不備の有無により異なりますが、概ね数週間から数か月かかる場合があります。正確な処理期間は管轄の法務局で確認してください。
手続きには専門的な知識が必要なため、司法書士にご依頼いただくのが一般的です。ご自身で準備する主な書類は以下の通りですが、事案によって異なりますので、まずはご相談ください。
【不動産を渡す側(登記義務者)】
- 不動産の権利証(または登記識別情報通知)
- 印鑑証明書(発行後3ヶ月以内のもの)
- 実印
【不動産をもらう側(登記権利者)】
- 住民票
- 認印
【その他】
- 固定資産評価証明書
- 離婚の事実がわかる戸籍謄本
- 財産分与の合意がわかる書類(離婚協議書など)
参考:不動産登記及び商業・法人登記の申請書様式一覧 – 法務局(出典:法務局ウェブサイト、参照日:2025-12-05。最新の情報は法務省等で確認してください。)
登記にかかる費用と税金のすべて

不動産の財産分与で気になるのが、費用や税金のことだと思います。主に必要となるのは以下の通りです。
① 登録免許税(国に納める税金)
登記手続きの際に必ずかかる税金です。税額は以下の計算式で算出されます。
固定資産税評価額 × 2%(100分の2)
例えば、評価額が1,500万円の不動産であれば、30万円の登録免許税がかかります。財産分与による所有権移転登記の場合、一般的には固定資産税評価額の2%(1000分の20)が適用されます(国税庁の登録免許税表参照)。ただし、登記原因や法改正等で税率が異なる場合があるため、申請前に法務局や税務当局で確認してください。
② 司法書士報酬
登記手続きを司法書士に依頼した場合の報酬です。事務所によって異なりますが、数万円から10万円程度が目安となります。当事務所の司法書士報酬は事案ごとに異なります。詳細は事前の無料相談・見積りでご提示します。
③ その他実費
住民票や固定資産評価証明書などの取得費用、郵送費などがかかります。
【財産分与で問題となるその他の税金】
- 贈与税:一般に財産分与は清算的な性質を有するため贈与税は課されませんが、分与の内容が通常想定される分与の範囲を著しく超える場合などは税務上贈与と判断され得ます。最終的な課税判断は税務署等の判断によるため、税理士や所轄の税務署にご確認ください。
- 譲渡所得税:不動産を渡す側に課税される可能性のある税金です。分与した不動産の価値が、取得した時よりも値上がりしている場合に、その値上がり益(譲渡所得)に対して課税されることがあります。
税金に関しては非常に専門的な判断が必要となりますので、ご心配な点があれば税理士などの専門家にご相談ください。
財産分与の合意後に注意すべき3つのポイント
無事に話し合いがまとまり、一安心…といきたいところですが、手続きを完全に終えるまでには、いくつか注意すべき点があります。将来のトラブルを避けるために、以下の3つのポイントを必ず押さえておきましょう。
ポイント1:口約束は危険!必ず公正証書を作成する
繰り返しになりますが、金銭の分割払いや養育費の支払いなど、将来にわたる約束事がある場合は、金銭の分割払いや養育費の取り決めがある場合、強制執行認諾文言を付した公正証書を作成することが有効な手段となります。各事情に応じて専門家と相談の上で適切な方法を選択してください。
ポイント2:不動産登記は離婚届の提出後に
手続きの順番は非常に重要です。特に不動産の名義変更は、必ず「離婚届を提出した後」に行ってください。
もし離婚が成立する前に名義変更をしてしまうと、税務上、それは「財産分与」ではなく夫婦間の「贈与」とみなされてしまう可能性があります。その場合、高額な贈与税や不動産取得税が課せられるリスクがあります。焦って手続きを進めて損をすることがないよう、「離婚成立 → 登記申請」という正しい順番を覚えておきましょう。
ポイント3:相手が財産を隠していたことが発覚したら?
離婚時には知らされていなかった財산(隠し財産)が、離婚後に発覚するケースも残念ながら存在します。もし、相手方が意図的に財産を隠していたことが明らかになった場合、改めてその財産についての分与を請求できる可能性があります。
ただし、そのためには相手が財産を隠していたことを証明する証拠が必要になります。このようなトラブルに直面した場合は、一人で悩まず、まずは専門家にご相談ください。状況に応じた適切な対処法を一緒に考えさせていただきます。
財産分与の手続きは専門家への相談が安心|司法書士の役割
ここまで財産分与の手続きについて解説してきましたが、多くの専門的な知識が必要となることがお分かりいただけたかと思います。特に不動産が関わる場合は、手続きがさらに複雑になります。一人で抱え込まず、専門家の力を借りることで、精神的な負担を大きく減らし、正確かつスムーズに手続きを完了させることができます。
もしお困りでしたら、財産分与に関する無料相談はこちらから当事務所へお気軽にご連絡ください。
司法書士と弁護士、どちらに相談すべき?
「この問題は、司法書士と弁護士のどちらに相談すればいいの?」と迷われる方もいらっしゃるかもしれません。両者の役割には違いがあります。
- 弁護士:相手方との交渉や、調停・審判での代理人となることができます。財産の分け方で揉めている、相手と直接話したくない、といった場合に頼りになります。
- 司法書士:当事者間で合意した内容に基づき、離婚協議書や公正証書の作成をサポートしたり、不動産の名義変更登記手続きを代理したりする専門家です。
この記事を読んでくださっている方のように、当事務所では、合意に基づく不動産の所有権移転登記の代理や、離婚協議書・公正証書作成のサポートを行っています。
横浜・川崎エリアなら、えなみ司法書士事務所へご相談ください
私たち、えなみ司法書士事務所は、横浜市・川崎市にお住まいの皆様の、新しい一歩を法務手続きの面から全力でサポートいたします。
当事務所では、お客様のご負担を少しでも軽くするため、以下の方針で業務を行っております。
- 訪問によるご相談:原則として横浜・川崎市内を対象に、ご自宅やご指定の場所へ伺います(事前予約制)。
- 柔軟な対応時間:事前にご予約いただければ、土日祝日や夜間(21時まで)のご相談にも対応可能です。
- 明確な費用説明:ご依頼いただく前に、必ず総額でのお見積りを提示いたします。
離婚後の大切な手続きを、安心して、そして確実に行うために。まずはお話をお聞かせください。あなたの新しいスタートを、私たちがしっかりと支えます。
事務所名:えなみ司法書士事務所
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司法書士:榎並 慶太(神奈川県司法書士会所属 第2554号)

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