このページの目次
2026年成年後見制度改正で何が変わる?2つの重要ポイント
「親の判断能力が心配だけど、成年後見制度は一度使うとやめられないって聞くし…」
「財産を全部管理されるのは、なんだか大げさすぎる気がする…」
これまで成年後見制度の利用をためらう大きな理由となっていた、これらの不安。もしあなたも同じように感じているなら、ぜひ知っていただきたいのが、成年後見制度の見直しに向けて進められている議論(2026年度中の法改正を目指す動き)です。この改正は、制度が抱えていた大きな課題を解消し、もっと私たちに寄り添った、使いやすいものへと生まれ変わらせるための大きな一歩となります。
難しく考える必要はありません。ポイントはたったの2つです。これまでと何がどう変わるのか、あなたの生活にどんな良い影響があるのか、一緒に見ていきましょう。このテーマの全体像については、成年後見人を選ぶべき?専門家が判断基準と代替策を解説で体系的に解説しています。
ポイント1:「終わりのない後見」から「目的達成で終われる後見」へ
これまでの成年後見制度の大きな壁の一つは、「取り消しの審判を受けない限り、原則としてご本人が亡くなるまで続く」という、いわゆる終身型になりやすい点でした。例えば、認知症の親御さんの実家を売却するために制度を利用した場合、売却後も後見人の役割は続き、報酬も発生し続ける…。この重い負担が、利用をためらわせる大きな原因でした。
しかし、見直し議論では、この終身型になりやすい点を改める方向で検討が進められています。これにより、「特定の目的が達成されたら、後見を終了させる」といった、より柔軟な利用を可能にする案が示されています。
たとえば、「施設入所費用を捻出するために実家を売却する」という目的のためだけに後見制度を利用し、売却手続きが無事に終わった段階で後見人の役割も終了する、といった使い方ができるようになります。これは、制度利用の心理的、そして経済的なハードルを大きく下げる、画期的な変更点と言えるでしょう。
ポイント2:「すべてお任せ」から「必要なことだけ頼める」へ
もう一つの大きな変更点は、支援のあり方そのものが変わることです。現行制度では、ご本人の判断能力に応じて「後見」「保佐」「補助」という3つのタイプに分けられ、それぞれに支援の範囲が決められていました。しかし、この仕組みでは本人の意思とは関係なく、過剰な支援になってしまうケースも少なくありませんでした。

今回の見直し議論では、この3類型を一本化する案(「補助」をベースにする案)が検討されています。これは単なる制度の簡素化ではありません。「ご本人の意思を最大限尊重し、本当に必要な支援だけをオーダーメイドで設計する」という考え方への大きな転換を意味します。
これからは、「財産のすべてを管理してもらう必要はないけれど、この不動産の契約手続きだけは不安だから手伝ってほしい」といった、ピンポイントの依頼が可能になります。ご本人の自己決定権がより尊重されることで、安心して制度を利用できる環境が整うのです。
【ケース別】改正で私たちの生活はどう変わる?
では、この2つの大きな変更点が、私たちの具体的な悩みにどう影響するのでしょうか。「不動産を売りたい」「これから申立てを考えている」という、ご相談の多い2つのケースをもとに、改正前と後で何が変わるのかを見ていきましょう。
ケース1:認知症の親の不動産を売却したい場合
「父が介護施設に入ることになり、その費用を作るために実家を売りたい。でも、父は認知症で不動産の売買契約ができない…」
これは、非常に多くの方が直面する切実な悩みです。
【これまでの制度では…】
成年後見制度を利用して不動産を売却することは可能でした。しかし、先述の通り「終身制」が壁となります。不動産の売却という目的を果たした後も後見は続き、ご本人が亡くなるまで専門家への報酬が発生し続けました。これが負担となり、制度の利用に踏み切れない方もいらっしゃいました。
【改正後の制度では…】
「不動産の売却」という目的を定めて後見を開始し、売却手続きが完了した時点で後見を終了できるようにする案が示されています。これにより、必要な期間だけ専門家のサポートを受け、費用負担を最小限に抑えながら目的を達成できるようになるのです。これまで費用面でためらっていた方にとって、不動産の売却という大きな課題を乗り越えるための、心強い選択肢となるでしょう。
ケース2:これから成年後見の申立てを考えている場合
「母の預金の管理や、介護サービスの契約手続きが難しくなってきた。そろそろ成年後見の申立てを考えたほうがいいかもしれない…」
【これまでの制度では…】
申立てをすると、家庭裁判所が医師の診断書などをもとに「後見」「保佐」「補助」のいずれかに分類しました。これにより、本人が「ここだけ手伝ってほしい」と思っていても、必要以上に権限が制限されてしまう可能性がありました。
【改正後の制度では…】
(仮に)類型の一本化が実現すれば、ご本人の状態や希望に応じて、より柔軟に支援内容を設計できるようになると期待されています。「預金の引き出しは家族ができるから、高額な契約を結ぶときだけ専門家の同意が必要」といった、一人ひとりの状況に合わせた「オーダーメイド型の支援」が基本となります。これにより、ご本人の意思がより尊重され、過剰な介入を防ぐことができるため、安心して申立てを検討できるようになるはずです。
専門家が回答「改正を待つべき?今すぐ動くべき?」
「改正で制度が使いやすくなるのは分かった。でも、うちは今すぐ動くべき?それとも2026年の改正を待ったほうがいいの?」
これは、皆さんが最も悩むポイントだと思います。司法書士として、この問いにお答えするための判断軸を2つお伝えします。それは「緊急性」と「目的」です。
「今すぐ動くべき」ケースとは?
法改正を待つこと自体が大きなリスクになる、待ったなしの状況があります。もし、以下のケースに当てはまる場合は、現行制度であっても速やかに申立てを行い、ご本人を保護することを最優先に考えるべきです。
- 親の預金口座が凍結され、生活費や医療費の支払いに困っている
- 悪質な訪問販売のターゲットにされるなど、消費者被害に遭う危険が迫っている
- 親族間で財産をめぐるトラブルが起きており、本人の財産が脅かされている
このような緊急性の高い状況では、改正を待つ数年間に取り返しのつかない事態が起こる可能性があります。まずはご本人の安全と生活を守ることが何よりも重要です。

「改正を待つのも選択肢」になるケースとは?
一方で、そこまで緊急性が高くない場合は、改正を待つことも有力な選択肢となります。
- 今は家族のサポートで問題なく生活できているが、将来に備えておきたい
- 不動産売却を考えているが、特に時期を急いでいるわけではない
これらのケースでは、改正後の「目的達成で終了できる」「必要なことだけ頼める」という柔軟な制度を利用するメリットが大きいと考えられます。ただし、「待つ」と決めた場合でも、何もしないのは得策ではありません。ご本人の判断能力がはっきりしているうちに、任意後見や家族信託といった他の選択肢を検討するなど、「今できる準備」を進めておくことが非常に大切です。
法改正を見据え、今から準備できること
改正を待つにせよ、今動くにせよ、最も大切なのは「ご本人の意思」です。判断能力がはっきりしているうちに行動を起こすことで、選択肢は大きく広がります。
任意後見契約や家族信託も選択肢に
成年後見制度(法定後見)は、すでにご本人の判断能力が低下してしまった後の、いわば最終手段です。そうなる前に、ご本人の意思で将来の財産管理や身上監護について決めておく方法があります。
- 任意後見契約:「もし将来、判断能力が衰えたら、この人(任意後見人)に、このような支援をお願いします」と、あらかじめ公正証書で契約しておく制度です。財産管理だけでなく、介護サービスの契約といった身上監護も任せることができます。
- 家族信託:特定の財産(例えば、実家の不動産や預金)の管理・処分を、信頼できる家族に託す契約です。不動産の売却や賃貸経営など、柔軟な財産管理が可能で、特に財産管理が主な目的の場合に有効な手段となります。
どちらの制度が適しているかは、ご家族の状況やご本人の希望によって異なります。成年後見以外の選択肢も視野に入れ、最適な方法を検討することが大切です。
家族会議で意思を確認しておく
どんな制度を選ぶか以前に、最も重要で、そして最初に行うべき準備は「家族での話し合い」です。
ご本人が元気なうちに、親子で、ご兄弟で、将来について話し合う時間を作りましょう。
- 将来、どんな場所で、どのように暮らしたいか
- 財産の管理は誰に任せたいか
- 延命治療についてどう考えているか
こうしたデリケートな話題は、つい後回しにしがちです。しかし、ご本人の意思が分からなくなってからでは、家族がすべてを決めなければならず、大きな負担と後悔に繋がることも少なくありません。エンディングノートなどを活用して、ご本人の想いを書き留めてもらうのも良い方法です。また、遺言書の作成も、相続時のトラブルを防ぎ、ご本人の意思を実現するための有効な手段となります。法的な手続きだけでなく、家族の絆を深めるためにも、ぜひ対話の機会を持ってください。
まとめ:成年後見制度の改正は、あなたと家族の未来を守るための大きな一歩です
2026年に予定されている成年後見制度の改正は、これまで多くの方が感じていた「使いにくさ」を解消し、より一人ひとりの意思と現実に寄り添う制度へと生まれ変わる、非常にポジティブな変化です。
「終わりのない後見」から「目的達成で終われる後見」へ。
「すべてお任せ」から「必要なことだけ頼める後見」へ。
この変化は、あなたとあなたの大切なご家族の未来を守るための、大きな希望となるはずです。
親御さんの将来について悩むことは、決して特別なことではありません。多くの方が同じ不安を抱えています。大切なのは、一人で抱え込まず、正しい情報を得て、早めに準備を始めることです。
今回の法改正について、あるいはご自身の状況でどの選択肢が最適なのか、少しでもご不安な点があれば、どうぞお気軽にご相談ください。あなたとご家族に寄り添い、最善の道筋を一緒に考えさせていただきます。

神奈川県横浜市・川崎市を中心に、東京都・千葉県・埼玉県など首都圏の皆さまからご相談をいただいております。
相続手続きや商業登記を通じて、「いつでも相談できて、いつでも来てもらえる」存在でありたいという思いから、無料の訪問面談を実施しております。また、平日はお仕事のため面談の時間が取れないお客様のご要望にお応えするため、平日・土日祝日、21時まで対応可能です。
安心して一歩を踏み出せるよう、丁寧にお手伝いします。どうぞお気軽にご連絡ください。
