不動産個人間売買の完全ガイド|必要書類・費用・流れを専門家が解説

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不動産の個人間売買、本当に大丈夫?まず知るべきメリットと注意点

ご親族やご友人との間で不動産の売買話がまとまったけれど、「不動産会社を通さないと、手続きが複雑で大変そう…」「後からトラブルになったらどうしよう…」と、大きな不安を感じていらっしゃいませんか?

仲介手数料を節約できるという魅力的なメリットがある一方で、専門的な知識がないまま個人間だけで取引を進めることには、たしかに様々なリスクが伴います。

でも、ご安心ください。この記事では、不動産取引の専門家である司法書士が、個人間売買の具体的な流れ、必要書類、費用、そして注意すべき点を一つひとつ丁寧に解説します。最後までお読みいただければ、安全に取引を終えるための道筋がはっきりと見えてくるはずです。

メリットは仲介手数料の節約だけではない

個人間売買の最大のメリットは、なんといっても不動産会社に支払う仲介手数料が不要になる点です。仲介手数料は法律で上限が定められており、例えば2,000万円の物件を売買した場合、売主・買主それぞれが70万円以上の手数料を支払うケースも少なくありません。この費用がまるまる節約できるのは、非常に大きな魅力と言えるでしょう。

それ以外にも、以下のようなメリットが考えられます。

  • 取引条件を柔軟に決めやすい:当事者同士の話し合いで、引渡し時期や支払い方法などを比較的自由に設定できます。
  • 消費税が原則かからない:売主が個人で事業者でない場合、土地はもちろん建物にも消費税はかかりません。
  • 気兼ねなく交渉できる:すでに関係性ができているため、価格や条件についてオープンに話し合いやすい側面もあります。

【要注意】専門家が語る個人間売買の5つのリスク

不動産個人間売買のメリット(仲介手数料ゼロ)とデメリット(契約不備・ローン・税金などのリスク)を比較した図解。

多くのメリットがある一方で、私たちは司法書士として、安易な個人間売買が原因で深刻なトラブルに発展してしまったケースを数多く見てきました。取引を始める前に、以下の5つのリスクを必ずご理解ください。

  1. 契約内容の不備によるトラブル:インターネット上のひな形をそのまま使った結果、物件の状態や代金の支払い条件など、重要な取り決めが曖昧になり、後から「言った、言わない」の争いに発展するケースです。
  2. 物件の隠れた欠陥(契約不適合責任):売買後に雨漏りやシロアリ被害といった隠れた欠陥が見つかった場合、売主は買主に対して修繕や代金減額などの責任(契約不適合責任)を負う可能性があります。契約書でこの責任の範囲を明確にしておかないと、大きな紛争の原因となります。
  3. 住宅ローン審査の問題:買主が住宅ローンを利用する場合、金融機関は取引の安全性を確認するため、不動産会社が作成する「重要事項説明書」の提出を求めることが一般的です。個人間売買ではこれがないため、ローン審査がスムーズに進まなかったり、融資を断られたりするリスクがあります。
  4. 煩雑な登記手続きのミス:不動産の名義変更(所有権移転登記)は、専門的な書類を正確に作成し、法務局に申請する必要があります。書類に不備があれば申請は受理されず、最悪の場合、代金を支払ったのに名義が変更できないという事態も起こり得ます。
  5. 予期せぬ税金問題:特に親族間の売買で、市場価格より著しく低い金額で取引すると、差額分が「贈与」とみなされ、高額な贈与税が課されることがあります。また、売主には売却益に対して譲渡所得税がかかる場合があるなど、税金の知識は不可欠です。

司法書士の視点:メリットとデメリットの本当の意味

「仲介手数料がかからない」というメリットは、確かに金銭的に大きな魅力です。しかし、それは「取引の安全性を確保するための専門家のサポートも、自分たちで手配する必要がある」ということの裏返しでもあります。

不動産会社は、物件調査から契約書作成、ローン手続きのサポートまで、取引全体の安全を管理する役割を担っています。その役割を省くということは、上で挙げたようなリスクをすべて当事者自身が管理しなければならない、ということです。

この点を理解せずにメリットだけを見て進めてしまうと、節約した仲介手数料をはるかに超える損失や、何より大切な人間関係の破綻に繋がることも少なくありません。だからこそ、私たちのような法律の専門家が、取引の安全を守るお手伝いをさせていただく意義があるのです。

【7ステップで解説】買主決定後の不動産個人間売買の全手続き

不動産個人間売買の7つのステップ(物件調査から確定申告まで)を時系列で示したフローチャート。

「リスクは分かったけれど、具体的に何から始めればいいの?」という方のために、買主が決まってから取引が完了するまでの全手続きを7つのステップに分けて解説します。ご自身の状況と照らし合わせながら、一つずつ確認していきましょう。

ステップ1:物件の調査と価格の最終合意

契約を結ぶ前に、売買の対象となる不動産について正確な情報を把握することが最も重要です。法務局で以下の書類を取得し、権利関係や物件の状況を確認しましょう。

  • 登記事項証明書(登記簿謄本):誰が所有者か、担保(抵当権)は付いていないかなどを確認します。
  • 公図や地積測量図:土地の形状や隣地との境界を確認します。

これらの調査は、後々のトラブルを防ぐための第一歩です。また、親しい間柄であっても、売買価格は近隣の取引事例などを参考に、客観的に見て妥当な金額を設定することが大切です。特に親族間で相場より極端に安い価格にすると贈与税の問題が生じる可能性があるため注意が必要です。最終的に合意した価格や条件は、口約束ではなく書面に残しておくと安心です。

参考:登記・供託オンライン申請システム 登記ねっと 供託ねっと

ステップ2:必要書類の準備【売主・買主別チェックリスト】

手続きをスムーズに進めるため、早めに必要書類の準備を始めましょう。一般的に必要となる書類は以下の通りです。

売主様にご準備いただく書類

書類名取得場所備考
登記済権利証または登記識別情報通知書(お手元で保管)いわゆる「権利証」です。紛失した場合は特別な手続きが必要です。
印鑑証明書市区町村役場発行後3ヶ月以内のものが必要です。
固定資産評価証明書市区町村役場(都税事務所)登記費用の計算に使用します。最新年度のものが必要です。
実印契約書や登記関連書類への押印に使用します。
本人確認書類運転免許証、マイナンバーカードなど顔写真付きのもの。
売主の必要書類リスト

買主様にご準備いただく書類

書類名取得場所備考
住民票市区町村役場新しい名義を登記するために必要です。
認印または実印契約書への押印に使用します。ローン利用時は実印と印鑑証明書が必要です。
本人確認書類運転免許証、マイナンバーカードなど。
買主の必要書類リスト

ステップ3:売買契約書の作成と締結

売買契約書は、個人間売買の心臓部とも言える最も重要な書類です。当事者間の合意内容を法的に有効な形で書面に落とし込み、将来のトラブルを防ぐ役割があります。最低限、以下の項目は必ず盛り込みましょう。

  • 売主と買主の情報
  • 物件の表示(登記事項証明書通りに正確に)
  • 売買代金の額、手付金の額、支払日
  • 所有権移転と引渡しの日
  • 契約不適合責任の範囲(隠れた欠陥への対応)
  • 手付解除や契約違反による解除の条件
  • 固定資産税などの分担(公租公課の精算)

安易にインターネット上のひな形を使うと、ご自身の取引の実態に合わず、かえってリスクを高めることになりかねません。安全な取引のためには、個別の事情を反映させた、法的に不備のない契約書を作成することが不可欠です。

えなみ司法書士事務所(神奈川県司法書士会所属 第2554号)からのご提案

「契約書に何を書けばいいか分からない」「自分たちで作るのは不安だ」と感じられるのは当然のことです。不動産売買契約書の作成は、まさに私たち司法書士の専門分野です。当事務所では、お客様から丁寧にお話を伺い、お二人の合意内容を正確に反映した売買契約書の作成をサポートいたします。取引の安全性向上のために、契約書作成や登記手続のサポートを提供します。具体的な対応内容や範囲は個別に説明します。

ステップ4:【買主向け】住宅ローンの申込み

買主が住宅ローンを利用する場合、売買契約を締結した後に金融機関へ本申込みを行うのが一般的です。個人間売買の場合、金融機関は慎重に審査する傾向があります。

その際、締結した「売買契約書」の提出が必須となります。しっかりとした契約書が作成されていることが、審査をスムーズに進めるための鍵となります。万が一ローン審査に通らなかった場合に備え、契約を白紙撤回できる「住宅ローン特約」を契約書に盛り込んでおくことも非常に重要です。この点も踏まえ、契約書作成の段階から専門家にご相談いただくことをお勧めします。

ステップ5:決済(残代金支払)と物件の引渡し

決済日は、取引の最終段階です。一般的には、平日の午前中に金融機関の応接室などで行われます。当日は、売主・買主、そして司法書士が同席します。

決済当日の主な流れは以下の通りです。司法書士がこの場に立ち会うことで、お金の支払いと書類の受け渡しが確実に行われることを確認し、取引の安全を確保します。そして、書類をお預かりした司法書士は、原則として決済後速やかに法務局へ登記申請を行います。

  1. 司法書士による最終の本人確認と登記書類の確認
  2. 買主から売主へ残代金の送金手続き
  3. 売主による残代金の着金確認
  4. 売主から買主へ物件の鍵や関連書類の引渡し
  5. 司法書士が登記申請に必要な書類一式を預かる

司法書士がこの場に立ち会うことで、お金の支払いと書類の受け渡しが確実に行われることを確認し、取引の安全を確保します。そして、書類をお預かりした司法書士は、原則として決済後、速やかに登記申請を行います。

ステップ6:所有権移転登記の申請

決済で司法書士がお預かりした書類を使い、法務局へ不動産の名義を売主から買主へ変更する「所有権移転登記」を申請します。この登記を行って初めて、買主は第三者に対して自分が新しい所有者であることを法的に主張できるようになります。

登記手続きはご自身で行うことも不可能ではありませんが、書類作成の専門性が非常に高く、少しの間違いも許されません。安全・確実な名義変更のため、司法書士にご依頼いただくのが一般的です。

登記申請後、登記完了までの目安は通常数日〜数週間ですが、法務局の混雑状況や申請内容により1か月程度かかる場合もあります。手続きが完了すると、法務局から新しい権利証である「登記識別情報通知書」が発行され、司法書士経由で買主様のお手元に届けられます。

ステップ7:【売主向け】不動産売却後の確定申告

不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、売主は売却した翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告を行う必要があります。利益が出なかった場合でも、税金の特例を利用するためには確定申告が必要です。

税金の計算は非常に複雑ですので、詳細は税理士にご相談されることをお勧めします。もしお知り合いの税理士がいらっしゃらない場合は、ご希望に応じて提携または紹介可能な税理士をご案内しますので、お気軽にお声がけください(紹介先は外部専門家であり、費用や条件は紹介先と個別にご確認ください)。

知らないと損!個人間売買でかかる費用と税金のすべて

不動産個人間売買にかかる費用と税金を計算しているイメージ。

「仲介手数料はかからないけど、他にどんなお金が必要なの?」という疑問にお答えします。個人間売買で発生する主な費用と税金をまとめました。

売主・買主で分担する費用一覧(登録免許税・印紙税など)

費用の種類誰が負担する?(一般的)内容
印紙税売主・買主で折半売買契約書に貼る収入印紙代。売買金額によって額が変わります。
登録免許税買主所有権移転登記を申請する際に国に納める税金。固定資産評価額に基づいて計算されます。
書類取得費用各々住民票や印鑑証明書などの取得にかかる実費です。
司法書士報酬買主(または双方で協議)契約書作成や登記申請を依頼した場合の専門家への報酬です。
取引で発生する主な費用

参考:No.7191 登録免許税の税額表

【売主】譲渡所得税はいくら?計算方法と使える特例

売主が最も気をつけるべき税金が、譲渡所得税(所得税・住民税)です。これは、不動産を売却して得た利益に対して課税されます。

譲渡所得 = 売却価格 - (取得費 + 譲渡費用)

  • 取得費:その不動産を購入したときの代金や手数料など。不明な場合は、売却価格の5%で計算することができます。
  • 譲渡費用:売却のために直接かかった費用(印紙税、司法書士報酬など)。

この計算でプラスになった場合に税金がかかります。税率は不動産の所有期間によって異なり、5年を超えて所有していると税率が低くなります。また、マイホームを売却した場合には、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例など、様々な制度があります。これらを活用することで、納税額を大きく抑えられる可能性があります。

司法書士の視点:税金で失敗しないために

譲渡所得税は、不動産売買において最も金額が大きくなりやすい税金の一つです。特に「先祖代々の土地で取得費が分からない」「昔の契約書をなくしてしまった」というご相談は非常に多くいただきます。

取得費が不明だと、本来払う必要のない多額の税金を納めることになりかねません。また、親族間の売買で価格設定を誤り、後から税務署に贈与税を指摘されるケースも後を絶ちません。

私たちは登記の専門家ですが、税務に関しても基本的な知識は持ち合わせており、お客様の状況から税務上のリスクを早期に発見することができます。少しでもご不安があれば、契約を進める前に必ずご相談ください。必要に応じて、提携する税理士と連携し、お客様にとって最適な解決策をご提案いたします。

参考:No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)

【買主】不動産取得税を忘れずに

買主が忘れてはならないのが、不動産取得税です。これは、不動産を取得したことに対して一度だけ課される都道府県税で、売買から数ヶ月後に納税通知書が送られてきます。

住宅用の不動産については大幅な軽減措置が設けられており、適用されれば税額がゼロになるケースも少なくありません。ただし、軽減措置を受けるためには申告が必要な場合がありますので、通知が届いたら内容をよく確認しましょう。

個人間売買の不安は司法書士が解決!サポート内容と費用

司法書士が不動産個人間売買のサポート内容について親身に説明している。

ここまでお読みいただき、個人間売買には専門的な知識が必要な場面が多く、ご自身たちだけで進めるには様々な不安が伴うことをご理解いただけたかと思います。そうした不安を解消し、安全な取引を実現するのが、私たち司法書士の役割です。

司法書士はどこまで頼める?不動産会社との違い

不動産会社と司法書士の役割は異なります。

  • 不動産会社:主に「買主を見つける」という仲介業務が中心です。
  • 司法書士:当事者が決まった後の、法的な手続きを安全に進める専門家です。

個人間売買において、司法書士は具体的に以下のようなサポートで取引の安全を守ります。

  • 物件の権利関係調査
  • 当事者のご意向を反映した売買契約書の作成
  • 住宅ローン手続きのアドバイス
  • 決済(代金支払)の立会い
  • 法務局への所有権移転登記の申請

つまり、契約から登記まで、取引における法的な部分をトータルでサポートし、トラブルを未然に防ぐのが司法書士の仕事です。

えなみ司法書士事務所の個人間売買サポートプランと費用

えなみ司法書士事務所では、横浜市・川崎市を中心に、不動産の個人間売買をお考えのお客様を力強くサポートしております。

当事務所では、「売買契約書の作成」から「決済立会い」「登記申請」までをすべて含んだ、分かりやすい一括サポートプランをご用意しております。料金は、一括で対応するプランを総額表示でご案内しています。詳細はお問い合わせください。

私たちは単に手続きを代行するだけではありません。お客様一人ひとりのご不安に寄り添い、安心して取引を終えられるまで、親身にサポートするパートナーでありたいと考えています。

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あなたの大切な不動産取引を、専門家として全力でサポートいたします。

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まとめ:安心できる個人間売買のために、まずは専門家へ相談を

不動産の個人間売買は、仲介手数料を節約できるという大きなメリットがありますが、その裏には契約内容の不備や登記手続きのミス、予期せぬ税金問題など、様々なリスクが潜んでいます。

しかし、取引のポイントを正しく理解し、司法書士のような専門家のサポートを受けることで、これらのリスクを回避し、安全かつスムーズに取引を完了させることが可能です。

大切な財産と人間関係を守るためにも、ご自身たちだけで進めようとせず、まずは一度、専門家にご相談ください。その第一歩が、安心できる取引の実現に繋がります。

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