一部の相続財産の認識がある場合の熟慮期間の起算点の繰下げ(相続放棄⑦)

例えば相続人は被相続人の不動産と預貯金についての認識をし、それらを相続人は遺産分割したが、熟慮期間経過後に予想外の高額の債務の支払いの請求を受けた場合、熟慮期間の繰下げをし、相続放棄ができないか?という論点があります。

この点判例は、熟慮期間の繰下げが認められる場合は、原則として相続人が被相続人に相続財産が全く存在しないと信じた場合に限られ、一部の相続財産の認識がある場合はもはや相続放棄は原則として認められない立場をとっています。ただし、相続人に消極財産の不存在を信じたことについて合理的な理由がある場合は例外的に繰下げをし、相続放棄を認めています。

  例えば①相続人は既に95才で被相続人とは交流はなく、認識していた積極財産の価値も乏しい場合は、消極財産の不存在を信じたことについて相当の理由があるとして繰下げを認めております。

  また、②被相続人が残した遺言により相続人自らに積極財産や消極財産は全く無く、他の債務についても遺言執行者である銀行から他の相続人に承継する手続きが完了した旨の報告を受けていた場合も、消極財産の不存在を信じたことについて相当の理由があるとして繰下げを認めております。

  さらに、③相続債務の不存在を誤信しその誤信に相当の理由がある場合は、相続放棄の手続きをとらずにした遺産分割協議は要素の錯誤により無効となり、相続放棄を認めております。

 他方、下級審の判例を含めると繰下げを認めない判例も多数あります。

熟慮期間の繰下げについては、「3か月を経過しているからもう無理!」と自分で判断せず、一度ご相談ください。

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